メイプルストーリー

おしゃべり広場

キャラクター名:
緋金
ワールド:
ゆかり

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創作物語

初心者物語 1ページ目「リス港口にて」 日付:2018.09.15 04:01 表示回数:136

“猛者として大陸中に名の知れ渡った者たちと、私は何度か話をした。
彼らはみな、不思議なくらいに口を揃えて言うのだ。
『辛いことも、困難なこともたくさんあるが、それでも冒険は良いものだ』
と。“
―ある男の手記より

*


『大陸が見える!』

甲板でそう叫んだカイは、船が港に着くや否や、興奮を抑えきれぬまま船から駆けおりた。

乗降口付近に立つ素朴な木の看板には、白いペンキでこう書かれていた。
“リス港口 ようこそメイプル大陸へ!”

リュックサックのストラップを両手で引っ張りながら、カイはうきうきと港の街を歩いた。
立ち並ぶ白い壁の民家。賑やかな人々の笑い声。海から吹き抜ける潮風。
ここがメイプル大陸の玄関なのか。
人がたくさんいて、活気に溢れている。

彼らと同じ場所に自分も足を踏み入れて、果たして生きていけるのだろうか。
ふと頭をよぎったその不安さえも、カイを更に浮足立たせる希望だった。
失敗も、成功も、今の自分にとっては新たな体験だ。
どんな出来事だって歓迎しよう。きっと、何もない自分を形作る、かけがえのない要素になるはずだ。


やや駆け足気味に街を歩いていたカイは、不意に視界に飛び込んできた人影に、そのまま勢いよく衝突した。

「おい。何してくれてんだ」
巨大な岩石を思わせる低い声が、カイの頭上から降ってくる。
「す、すみません!」
そう叫びながら慌てて上を向くと、真っ赤な髪をオールバックにした、目つきの悪い男が立っていた。

男の目線は、ぴたりとこちらを見下ろしている。
ゆっくりとその顔から視線を下げると、男の髪と同じような赤色のペンキをたっぷり含んだブラシと、そのペンキがべっとりと付着した黒いベストが目に入った。
どうやら、カイがぶつかった拍子に、ブラシが男の服に当たってしまったらしい。
急速に自分の体温が冷えていくのを感じながら、カイはしどろもどろに、もう一度『すみません』と呟いた。

まだこの街には来たばかりで、知り合いなんていない。
もちろん、服を弁償する金も持ちあわせていない。
カイには、ただ謝罪することしかできなかった。

「ごめんで済んだら、世話ねえんだよなぁ。
おい、ガキ。謝罪は良いから、弁償金を出せ。それくらい持ってんだろう」
カイが恐れていた通りのことを、男は口にした。
「……ないんです」
「……あ?」
男の目つきが一層鋭くなる。
さながら、今の僕は、ヘビに睨まれるカエルだ。
無意識に首を縮めながら、カイは再度繰り返した。
「ないんです……お金。一銭も。ごめんなさい……」

ああ、これはもしかして、もう冒険は終わりなのか。
それ以上寄せたら潰れてしまいそうなほど、眉を寄せていく男の顔を眺めながら、カイはそんなことを考えていた。
その、次の瞬間だった。

「金ならあるぜ」
ひょうきんそうな男の声が、対峙する二人の左側から聞こえてきた。

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