メイプルストーリー

おしゃべり広場

キャラクター名:
獣狸
ワールド:
ゆかり

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創作物語

無くしたものはなんですか(20) 日付:2019.02.22 22:22 表示回数:250

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「ど、どうしたの? 長老の家にいるなんて……」
「あぁいや、話すと長くなるんだ──」
「あっ」
 またもフリードの言葉を遮って、青年はウンウォルを指差す。
「こ、この人、昼間にレッドドラゴンと揉めてた……」
「えっ」
「なんじゃと?」
 青年の最悪なタイミングの最悪な暴露。刺々しい声を上げる長老に、フリードは否定の意を込めて激しく手を振る。
「えっ、あ、長老あの、話を聞いて下さい話を」
 まさか見られていたなんて、しかしだいぶ騒いでいた為、何人か見に来ていてもおかしくはない。長老は唸って、おどおどするフリードをじっと見つめた。
「擁護しようとしているところを見ると……お主、事情を知っておるな?」
「あ、はい、まぁ……」
 知っているどころかがっつり当事者です、などと余計な事は到底言えず、彼は曖昧に返事を返す。
 長老は暫しの間いぶかしんだ目を向けていたが、苦笑いをするフリード、一切動じないウンウォルを交互に見て、ひとつ大きな溜め息をついた。
「まぁ、お主の事じゃ。正当な理由も無く擁護もすまい」
「あ、ありがとうございます」
 ほっと胸を撫で下ろすフリード。ウンウォルはその様子を見て、彼の人徳にひそかに感心する。
「それと、先程も何を言わんとしていたか大体想像はつく」
「……それに対しての、お返事は……?」
 長老はふむ、と頷いた。
「……つい先日の事じゃ、ひとりの傭兵が儂の所へ尋ねてきた」
「……?」
 急な話題に、フリードは首を傾げる。その様子を尻目に、長老は語るように話を続けた。
「そやつは、あの魔法使いを探しておると言っておった。何故なのか理由を聞くと、こう答えたのじゃ」

『ここは随分と平和だ』
『ほう?』
『今、世の中は混沌としている。誰かが誰かを疑い、盗み、殺め、騙し合っている』
『そんな馬鹿な事を……』
『そんな世の中をどうにかできるのが、その魔法使いらしくてな』

「この町でもいさかいが無い訳ではない。しかし、そんなものは比ではないほど荒んでおると言っておった」
「あの魔法使いも、『ここは良い町だ』と言っておった。儂はそれをただの賛辞だと思っておったが、それはそんな世の中と比べての事であったのかとその時思ったのじゃ」
「…………」
「そ、そんな、恐ろしい話が……」
 長老の話が一区切りつくと、無言の彼らに代わって青年が声を震わせる。フリードは、何かを堪えるかのように拳をぎゅっと握っていた。
「(彼は、そんな外の世界からやってきたのか……)」
 凄惨さの想像はつかないが、彼に名前が無かったことに合点がいくような気がして、そしてそうであるならば尚のこと、差し伸べた手を閉じる事などできなくなって、フリードは切なさに顔を微かに歪ませる。
「あの魔法使いの出来事、傭兵の話、このふたつで余所者に対して疑心感を抱いておったが、お主の先程の言葉も一理ある」
 長老の言葉に、フリードが目を開いて喜色を滲ませた。長老は彼の感情を抑えるようにすかさず、しかし、と反語を続ける。
「あまり問題にはならなかったとはいえ、どうも既に揉め事を起こしておるようじゃし……やはりおいそれと受け入れる訳にはいかんのう」
「ですからそこは……」
「何かあれば自分が全ての責任を負うというのじゃろう? それではまだ足りんのう」
「そんな……ではどうすれば?」
 足りない、という事は他に何か条件を加えれば許されるという事。相手が提示してくれればそれが一番納得させる手立てになる。何を言われても飲むしかないと覚悟の上で、フリードは問うた。
 長老は髭を撫でながら、そこはかとなく含み笑うようにして言い放つ。

「そうじゃのう……その男、ウンウォルと言ったか? そやつとお主が一緒に住むのなら良いぞ」

「「え?」」

 フリードとウンウォルの、驚きの声が重なる。

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