「仲間はずれ」
「・・・では、今日の授業はこれまで。」
授業の終わりを告げるチャイムの音が校内に鳴り響く。
ハインズ先生の授業はまだ途中だったが、時間にはキッチリしているので、
もう時間か・・・と残念そうに話を切り上げ授業を終わらせた。
「よいか?今度ここをテストする。復習しておくように」
そういうとボンと白い煙が上がりハインズ先生の姿が消える。
普通の1時間の授業が無限に思えるほど長い話にやれやれといった感じで
授業直後は大きくあくびをしたり、背伸びをしたり、机に顔をうずめたりしている
生徒達が目立つ。
――――――
私はここ、エリニア魔法学校に通う生徒だ。
エリニアは魔法使いの故郷というべき場所だ。もともと魔力が強く流れている森で、
そこに生える木は驚くほど巨大だ。木の周りをこれまた巨大なツタがまいていて、
ツタを足場代わりに無数の家が建っている。
エルフや妖精、人間達が仲良く暮らす、静かな森だ。
その一角に、大魔法使いハインズが創設したハインズ魔法学校がある。
魔法使いを志す者の学び舎だ。学科別に分けられて、
治療や加護、蘇生などの聖魔法を学ぶ聖魔科。
氷と雷を自在に操る魔術師を育成する蒼魔法科。
炎と毒を研究し有望な黒魔術士を育成する魔術科。
などがある。学科別に学年が5つ、そして学年ごとに5クラスある。
私は聖魔法を学ぶ聖魔科の2年生だ。
―――――――
授業が終わってからしばらく机でぐったりしていたクラスの生徒も
仲のいい友達とおしゃべりをしたり、教室を出たり、休み時間ならではの
賑やかな声が学校中に響き渡る。
皆がわいわいおしゃべりをしている中、私はぼんやり窓の外を眺めていた。
あの時の夢。不思議な夢をずっと何度も思い出していた。
寝ていれば夢を見ることは当然だけど、なぜかあの夢だけは忘れることが出来ない。
(このままだと死んじまうぜ?)
(時間がないんだ)
どうゆうことだろう?
夢の中ではっきり聞こえた言葉。何かを訴えるようなそんな気がする。
一体何・・・?
意味を自分自身の頭の中で解いていると肩をポンと叩かれた。
私がはっと振り向くと隣の席の紫色の長い髪に目までかかる前髪が特徴的な
ラピちゃんが心配そうにもじもじしながら立っていた。
「リオちゃん大丈夫・・・?難しい顔してるけどどうかしたの・・・?」
消えそうになる小さい声で心配をするらぴちゃん。
ラピちゃんは気が弱い子で友達もそんなに多くないし、誰かと話しているところを
私は見たことがない。私もよく話すってこともないけど、気がついたら二人揃ってそばにいるって事がよくある。
「あっ大丈夫だよ!悩みってほどでもないし ありがとう!」
心配をしてくれてるラピちゃんに明るく笑顔で返事をした。
らぴちゃんは小さく頷くとあっと何かに気づいた様子で何か言いたそうに口をぱくぱくさせている。
らぴちゃんは声が小さくなかなか聞き取れないって事がよくある。
それでも、何?っとラピちゃんに耳を向けると。
「授業がもうはじまっちゃうよ・・・」
「あぁ!?」
慌てて周りを見るとクラスには私とらぴちゃんしかいなかった。
次の授業は蒼魔科との合同授業でクラスの皆は別の教室に移動してしまっている。
授業が始まろうとしているのに考え事をしていて全く気がつかない私を
らぴちゃんは気にかけて声をかけてくれていた。
「らぴちゃん!ありがとう!はやくいこう!」
「うん・・・!」
らぴちゃんが嬉しそうに返事をする。
私は教科書を机から引っ張りだしてラピちゃんの手を握り教室を飛び出した。
後編へ続きます。
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