森和が手錠を掛けようとした時だった。
森和は腹部に激痛が走ったのを感じた。
まさか・・・彼女はまだ短剣を隠していたのか?
同僚の保安官の頭を貫いた短剣はまだ刺さっている。
もう短剣はないはずだぞ・・・。森和はそう思った。
しかし森和の腹を貫いたのは短剣ではなかった。
ましてや、素手で体を貫いたわけではなかった。
素手で人の体を貫けるのはあのゲームに出てくるサングラスをかけた金髪オールバックのおっさんぐらいだ。
――ボールペンだった。それも、森和がさっきまで始末書を書くのに使っていたやつだ。
レイラは床に座りこんだとき、ちょうど彼女の前に落ちてたボールペンを拾って、森和に不意打ちを喰らわせたのだ。
ボールペンが森和の腹から離れた。
森和はレイラの不意打ちによろめく。
森和「貴様ぁ・・・ひきょ――」
森和が言葉を切る前にレイラは容赦なく拳を森和の胸部にかました。
森和は意識が朦朧とし始め、やがて彼の視界が真っ黒になった。
その後、森和は拷問を受け続けた。
レイラの目的は「あいつ」だった。レイラは森和から「あいつ」についての情報を吐かせようとした。
しかし森和は喋らなかった。自分と親しい仲の「あいつ」を失うわけにはいかないからだ。
レイラは何も喋らない森和に対し、暴虐の限りを尽くした。
時には鞭で叩き、熱湯を浴びせたり、さらには森和の目の前で彼の同僚の遺体を短剣で弄んだりさえした。
それでも森和は口を開こうとしなかった。友人である「あいつ」を案じて・・・
森和は「あいつ」のことを心配するごとに、腹部の痛みを感じていた。
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