ハルト「おのれロリコン!酢を好き勝手にはさせん!」
ハルトは酢を攫った敵の後を追って保安庁へ向かった。
保安庁に入ろうとしたとき、入り口を張っていた兵士2名に銃剣で道を塞がれた
兵士「誰だ貴様!」
兵士はハルトに問う。
ハルト「ここに俺の知り合いがいる。通してくれ」
ハルトは真顔で淡々と答えた。しかし兵士はただハルトの道を塞ぎ続ける。
兵士「一般市民はここには入れるなとの命令だ!とっとと郊外へ――!?」
兵士はハルトが背負っている武器を見た。
その武器は冒険者が扱うものだと判断した。
兵士「貴様!冒険者だな!?」
兵士「そこでおとなしくしろ!冒険者め!」
兵士はハルトの道を塞いだ銃剣をハルトへ向けた。
ハルトは呆れながらも兵士を見つめる。
ハルト「この武器は護身用に持ってただけで・・・って通じるわけもないか」
一瞬の出来事だった。
ハルトは背負っているジャドの柄に手をかけ、兵士が銃剣で刺そうとした瞬間にジャドを鞘から素早く抜き、兵士二名を蹴散らした。
そしてジャドを鞘に収めた。
しかし兵士たちにはハルトがジャドの柄に手をかけたところしか見えなかった。
居合い切りだ。敵の不意をつくのに最も有効な剣術の一つ。
剣をつかいこなしている者が繰り出す居合いの剣撃は一般人にはその太刀筋を目視することができない。
居合いは普通倭刀(現実世界で言う日本刀)などの腰に帯刀できる大きさの刀剣でやることが多い。
大振りの刀剣で居合いを出すにはそれなりの腕力と素早さがいる。
ハルトがそれをなんなくこなせるという事は剣術を極めに極めたと言うことなのだ。
兵士は素早い居合いを避けきれずに攻撃を喰らい、倒れた。
しかし兵士の体から血の一筋も流れていなかった。
みねうちだ。手加減するために剣の峰で敵を攻撃する技だ。
今のハルトは生きるものを殺める行為から遠のいている。
トラウマがハルトに殺すなと告げているのだ。
ハルト「今の俺が相手でよかったな。昔の俺だったらお前らは間違いなく死んでいたな」
ハルトは兵士に踵を返し、保安庁へ入った。
幸い出動命令が出ていたのか、保安庁にいる政府軍兵士は少なめだった。
10人くらいの兵士がハルトの行く手を阻んだ。
ハルトの強さを察したのか、兵士たちの銃剣を持つ手が震えていた。
その中の一人が他の兵士に向かって叫んだ。
兵士「おい誰か!取調室にいる大佐にれんら――」
兵士の台詞はハルトの居合いによって中断された。
その他の兵士はパニックに陥り、奇声を上げて銃剣を振り回してハルトに突撃した。
しかし彼らもハルトの一太刀によって箒に掃かれた埃の如くなぎ払われた。
ハルトは剣を収めると、すぐさま酢の行方を捜し始めた。
直感のみを頼りに、酢はどこにいるかあちらこちらを探して回り、部屋を片っ端から探し回った。
早くしなければ、ハルトはそう思った。
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