「絶対に・・・絶対に倒す、んだ・・・ッ!」
何時間が経ったのだろうか・・・バルログとの戦闘は続いている。
両陣営共に消耗しきっている。
遠征隊側は残る人員が僅か十人程度にも減り、バルログはひどく消耗し、
その息を荒げている。
・・・最終決戦だ、ここで、全て終わらせてやる!
最前線で戦う者は私と放浪の槍使い、そして遠征隊長・・・
後衛は封印を行う賢者や弓使いが配置に付き、決戦への準備を進めている。
そして、隊長が角笛を吹き。
「・・・決戦だ!世界に勝利と栄光を!
行くぞバルログ、覚悟は良いなァ!!」
三人の英雄たちがバルログへと歩を進めていく。
ひどく消耗しているが、それでもなお、英雄達は勇気を前に突き進んでいく。
槍使いが高く飛翔し、そのままバルログの腕を地面へと刺し繋ぐ。
まるでミスリル鋼のようだった肉体を易々と貫き、バルログにダメージを与える。
次に隊長がもう片方の腕へと回り、その腕をぶった切る。
滝のように血が噴出し、バルログの顔が一瞬苦痛に悶える。
そして、私がバルログの頭目掛け飛び上がり、そのまま剣を頭へと振り落とした。
すぐさま賢者たちが配置へと付き、バルログの封印を行う。
バルログの体は鈍く光る鎖で繋がれ、両方の腕には釘が打たれ・・・
その頭には私の剣が突き刺された。
しかし、封印を行う為の力が少し足りない。
・・・息子との約束は嘘になるが、ならば、世界の為に死のうじゃないか。
私は前へと出、肉体を封印に使えと言った。
「だが、最後に手記を書かせてはくれないか」
「・・・いいでしょう」
そして、程なくして。
私の体がバルログと鎖と杭で固定される。
体に杭を打たれるのが耐え難い痛みだったが・・・今はどうでもよい。
悪いな、息子よ、父さんは。
◆◆◆
手記の最後のページには、こう綴られていた。
「約束を守れなくて、悪かった、アルフレートとシャルロッテ。
いつも約束は守れと言っていたが、逆に私が破ってしまってごめんよ。
だが、父である私が死んでも、私はいつでも傍に居、守ってあげよう・・・
ありがとう、そしてごめんなさい 父より」
短篇「とある傭兵の手記」終。
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