メイプルストーリー

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雪嘩
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創作物語

Ragnarock Again第8話 日付:2011.12.29 23:30 表示回数:416

その日の天気は曇りだった。
今にも降り出しそうな雨。
その中で私と家族は共に買い物に出かけるのであった。


忘れた記憶、欠片と雫”琥珀”


───春風 凛

始まりは妹の駄々からだった。
その日隣町のデパートで妹の大好きな戦隊物の特撮番組『ご飯大好きスイハンジャー』のヒーローショーがやるらしく、それが見たいが為に車に乗って出かける事になった。
その頃の私も妹と同じくそのヒーローが好きだったので、共に駄々を捏ねたのだが。
まさかその日、二人の家族を失うなどとも知らずに…。
それは家を出て数十分後。
もうすぐ隣町に着くかという所で起きた。
信号を無視した車が私達家族の乗った車に側面から衝突してきたのだ。
それによって、ぶつけられた側、右側に乗っていた父と妹は死んだ。
左側の方に乗っていた母は命には別条がなかったものの、大怪我をした。
私はというと、どういう訳なのか以外にも無傷であった。
その頃の私は何が起きたのか理解できず、茫然とその様子を眺める事しか出来なかった。
ぶつかって来た車から一人の男が降りてきた。
私はその男の顔を睨んだ。
男は怯えたようにそこを逃げ去ろうとした。
周りにいた人が男を捕まえようとしたが、男はその人達を突き飛ばしながら姿を消した。
それから少しして、警察や消防、救急車がやって来た。
一番最初に運ばれたのは父で、その後妹が救急車に搬送されて行った。
私はその時、搬送されて行く二人の事を泣く事も忘れ眺めていた。
…体から大量の血が流れていた。
車の割れたガラスの破片が、突き刺さっているのが分かった。
その時はまだ妹の意識はあったらしく、最後に妹は私に向かい何かを言った。
私はそれが良く聞こえず、近くに寄って言葉を聞いた。
妹は再度言葉を口にし、そして気を失った。
だが、私はその言葉が何だったのかを聞き取る事が出来なかった。
…雨が降り出した。
搬送される妹を見て、泣かない私の代わりに泣くかのように、雨は激しく降り出し、逃げ去る男を憎む心を表すかの如く、轟雷が鳴り響いた。





「…ん…り………ん……」

誰かの声が聞こえる。
一体誰の声?

「凛…おい…凛!」

「…竜…也…?って近いわぁッ!!」

竜也の顔がすぐ近くまで迫っていたのに気づいた私は、彼を思いっきり突き飛ばした。

「っていてえ!何するんだよ!」

「こっちの台詞じゃぁッ!!」

「ったく、タクシーが着いたってのに中々起きないから起こしてやろうとしただけなのによ…」

ん…今何かおかしな事を言わなかったか?

「タク…シー?」

「ああ、そうだよ」

そう言われて周囲を見渡すと、そこは確かにタクシーの中であった。
外では相変わらずの雨が降り続いている。

「ってあれ、何で私タクシーに?」

「何でって…そりゃ、お前」

そう言って竜也は今までの経緯を話してくれた。
それによれば、どうやら私は通信の最後に狼さんに炬燵さんの居場所を聞き、炬燵さんがいるというリス港口の情報屋に向かう為にタクシーに乗ったという。
その後私は竜也にこれまでの経緯を説明し、共に向かってくれる事になった。
その際ハインズはタクシー代と幾つかの薬を分け与え、魔法図書館に帰ったらしい。
そうしてタクシーに乗っている途中、疲れたのか私は眠ってしまったらしい。
だがしかし、そんな記憶私には一切無い。
寝てしまったというのだから、その時の記憶が無いのは当然なのだが…。
狼さんとの通信を終えた記憶が無い、というのはどういう事なのだろうか?
その時行動していた私は、一体誰だったのだろうか?

「…まぁ、いっか」

もしかすると私が無意識の内にその事を忘れてしまっただけなのかもしれない。
そうして私は炬燵さんの所に急ぐのが先決だと思い、タクシーを降りて情報屋へと向かうのであった。
深い悲しみと思考の中で、私はその時起きた事を不思議に感じつつも、深く追求する事は無かった。

━ソノ身に宿ス負の感情ヲ
    モットモっと膨張さセヨ━

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