『世界は一度崩れ落ちたにも関わらず、今も廻り続けている。それは何故だか分かるか?』
聞き覚えのある男の声がした。
「お前は…誰…だ…?」
俺は声の方を向く。
そこにあったのは”闇”
全てを呑み込まんとする、絶望たる闇。
『狂気の力がこの世界を廻すのだよ。輪廻転生。何度も何度も同じ世界を』
こいつは何だ?
一体何を言っている?
『奴にはまだ足りないのだよ。自身の偽りを真実とした結果、世界の崩壊と共に今再び力を失ったのだからな』
訳が分からない。
偽り?真実?
何が言いたいんだ。
『所詮我々も奴の駒に過ぎなかったのだよ。女神も、暗黒の魔法使いも、あの方でさえ…な』
駒…?
『そうだ。だが貴様は違う。奴に唯一対抗する事の出来る力…炎狼の力を持っているのだからな』
炎狼の力?
そんな力…俺には…無い。
『いいやあるさ。分かっているのだろう?あの時、暗黒竜と戦っている時、発動した狂気の力を』
狂気の力?
知らない。
そんな物…俺は知らない!
『いい加減認めたらどうだ?自分の力、その本当の意味を』
認めない。
俺は絶対認めない!
『…以外に頑固なのだな。だが、何れ気づく事となる。お前の大切な妹君もそれをお望みなのだからな!』
妹君?
狼が?
リーン。
リーン。
風鈴の音が聞こえた。
一体どこから?
俺は辺りを見渡した。
「お姉ちゃん」
誰かが俺にそう言った。
俺は誰かの顔を見た。
そして光が世界に溢れた。
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