「姉…き…姉貴…姉貴!?」
「ん…おお…かみ…?」
目を覚ますとそこには狼の姿があった。
他に凛や見知らぬ男、トゥルーさんの姿も。
そしてもう一人。
「良かった!目を覚ましたのですね!」
「シビー…ユ…?」
「あら?何故私の名を?」
それは確かに夢の中に出てきた女の人であった。
どうやら名前も合っているらしい。
「…何となくそんな気がしただけだ」
俺は曖昧にする為にそう言った。
さっきの夢は一体何だったんだ?
それにあいつは…あの誰かは一体?
「炬燵さん…良かった」
凛が安堵した様子でそう言った。
ん、そういえば。
「何で凛がここに?」
「あ、それはですね」
凛が続ける。
「水晶の雷馬を見つけました」
「何だって!?」
俺は傷の痛みを忘れ、そう叫び立ち上がった。
*
「どうやら作戦は失敗のようだね」
人形遣いの少年が言った。
少女…齒車はそれに動じず、ただじっと水晶を眺める。
そこには炬燵達の姿が映っていた。
「あの頃と違うのは当たり前。ノルマは達成した」
齒車はそう言うと、その場を去ろうとする。
「しかし厄介な事になって来たね。水晶の雷馬…奴が動いているとは」
ピクッ。
齒車の体がそこで止まった。
「…それは本当に雷馬本人?」
人形遣いは先程までとは違う、真剣な様子で口を開く。
「それはまだ分からない。だけど”政府”について何か知っている事は間違いない」
齒車は顔を顰めた。
「奴が動くとなると、氷狼が動き出す可能性がある。次の一手はどうするか」
「それならスターライトを動かしてみるか」
そう言ったのは一人の少女。
いや、少年。
見た目は歳に似合わずボンキュッボンでスタイルの良い女の子だが、その実性別は男だ。
しかし多重人格のようで女性になる事もあるらしい。
所謂ニューハーフとでも言う所だろうか。
しかしながら本当に女性の時は別の人格のようで、陰茎もまた消滅するらしい。
特殊な体の持ち主だ。
口調からして今は男性の人格であるらしい。
「スターライト?」
齒車が初めて聞く単語に疑問を覚える。
「変わり者な奴でね。だが、使える」
「それは本当?くるぶし」
「ああ、間違いない」
くるぶしと呼ばれた少年は笑いながらそう言うと、姿を消した。
━動き出す黒い影
迫り来るは真実の闇
散らばった記憶の欠片を
求め彷徨う迷い犬━
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