俺は凛の話を聞いて驚いた。
アイツは意味もなくそんな事をする奴じゃない。
きっと理由があるはずだ。
そう思った。
情報屋を抜けた事も、何か理由があったからではないのかと俺は予想した。
だからアイツを探していた。
真実を知る為に。
「あの人、一体何なんです?」
凛がそう訊ねてきた。
「…そうだな」
ここまで手伝って貰ったんだ。
それに、隠す事も無いだろう。
俺は凛に俺達の目的と、水晶の雷馬を探す理由について話す事にした。
*
全ての始まりはあの日から。
奴との戦いの中、私は真実を思い出したんだ。
あの時、あいつは確かに言ったんだ。
”本当の敵は情報屋内にいる”と。
忘れた記憶、欠片と雫”瑪瑙”
───水晶の雷馬
英雄。
あの日の私は、それと似て異なる存在であった。
過去の事は、あまり思い出したくない。
思い出してしまったら、戻れなくなる。
だから私は忘れていた。
本当の敵の正体と、その目的を。
「うぅあぁ、もう…兄貴。何一人で行動してるんですか」
妹のアクアの満月、通称アクアがそう言ってくる。
「いや、勝手に消えたのアクアだったと思うんだけど…」
私は困り気味にそう言った。
実際問題最初に姿を消したのはアクアだ。
”政府”という組織の調査の為エリニアを訪れたはいいものの、アクアは勝手に「薬補充ーっと」とか言いながらどこかに消えてしまった。
私は目的完遂の為魔法図書館の周囲を調査、途中雨が降り出したがそれを気にせず行動を続行した。
その時だ。
あの二人組が現れたのは。
最初はただの魔法使いの子供かと思っていた。
だが、違かった。
魔法図書館の窓から私の事を見た魔法使いの少女からはあの力と同じ物が感じられた。
そして少女は、私を追って外に出てきた。
消さなければ。
そう思った。
あの力を持っているとすれば、それは脅威以外の何物でもない。
そしてハインズ…政府と繋がりがあるとすると…。
私はゾッとした。
このままでは、私だけでなくアクアまでもが殺られる可能性がある。
それならば、私は殺られる前に殺るしかない。
そうして鉾を振り翳した。
しかし、そこにハインズが現れ攻撃を防いだ。
───不味い
一対二、いや三か。
この状況では此方が不利だ。
丁度その時、アクアがやって来た。
私は逃げるなら今しかないと思い、帰還の書を使ってヘネシスまで飛んで行った。
「しかし兄貴、本当何ですか?」
「何が?」
唐突にアクアがそんな事を言い出したので、私は何の事なのか分からずそう答えた。
「惚けないで下さいよ。あの話ですよ。あの話」
「あの話?」
「本当の敵、ですよ」
「ああ」
それならそうと最初から言えばいいのに、と私は思いつつもそれについて話す事にした。
「間違いないよ。確かにあの時、あいつは言ったんだ」
それを聞いたアクアは、顔を顰めた。
「いつも思うんですけど、そのあいつって誰何ですか?」
その言葉に対し、私は答えた。
「…誰だったかな」
それは遠い日の記憶。
紅に染まる地上で、闇と戦った日の出来事。
絶対に思い出してはならない、封印された記憶の日々。
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