「え?」
地震!?
大きな地震だ。初期微動なんてない、いきなりかなりの大きさ。咄嗟のことでゼロのブリザードも消滅した。ゼロが魔法をキャンセルし、テレポートでどこかに行ってしまった。
地震の大きさは想像以上でこれまで体験したことのない、立っていることもできない程。
周りの建物が崩れ始まる。レイブンシティーはヘネシスとかに比べれば新しい建物が少なく、非常に脆い。この大きさの地震ならほとんどの建物が倒壊する……。
暴徒も喧嘩をやめて、自己防衛のことばかり考えているようだ。この調子じゃ地割れまで起きそうだ。
「リュー! さっさと来い!」
レイの声が私の耳へと響き渡ってくる。自然と声のする方を向いても暴徒だらけでレイの姿を確認することができない。
街は大混乱で逃げまとう民でごった返していた。さっきまで興奮していたのは一体なんだったの、と思えるほど。
それにしても揺れが長い。少しは収まったとしてもとても走れるほどではなかった。
地面に這い蹲りながら何とか踏まれないようにその場を維持している。
「レイどこ!?」
必死に周囲を見渡した。やはりレイの姿を確認することはできない。
あんなでかい大剣持ってるのにどうして見つけられない!?
「そのまま前進しろ」
言われたとおりふら付きながらも立ち上がって足を前へと進めた。断続的に余震が続いているせいか、バランス感覚を失いかける。
暴徒を避けながら前進して行くと馬鹿でかい剣を背負った人が倒れていた。というかレイだった。
「ちょ、大丈夫?」
「足を撃たれただけだ。止血はしたが立つのに苦労してな……」
レイに肩を貸して立ち上がった。未だに住民が逃げ続けていて、結構ぶつかって来る。ここに立ち止まっていると邪魔になるようだ。
「とりあえず街を出るか、安全な場所へ行った方がいいね」
「大至急スリーピーウッド……いや、アリの巣へ」
レイは急いでいた。表情や態度、言動からしてそれは伺える。
揺れ続けていることに加え、レイの怪我のせいで走ることはできなかった。ゆっくり一歩ずつ、歩調を合わせながら。
「情報屋には会えた?」
「行って少し話したら殺された。窓からの狙撃。目の前で殺されたよ。メモはもらったけどこれの意味はよくわからない。あぁ、後ついでの情報ももらった」
「撃たれたってまさかその傷、犯人に?」
「そんなところだ」
そう言ってレイはポケットからメモを取り出す。くしゃくしゃになっていたが、文字は読み取れた。
『樹の下。樹の上。樹の中。』
三つのキーワード。順番は何故か下、上、中だった。シンプルなメモ書きではあったが傍から見れば意味不明なメッセージである。
多分樹っていうのは世界樹のことを示すことは何となくわかるのだけれども、下・上・中の意味がまったくわからない。
「どういうこと?」
「あいつは情報を手に入れたら、それが自分だけにわかるように、漏洩しないようにこうやって意味不明なメッセージで管理しているんだ。正直言って意味不明」
「えぇ……」
「それを解読するために専門家のところに行く」
地震は大分弱まっていた。住民の数も減ってきている。
周りを見渡すとやはり倒壊した建物ばかり。一部では地割れを起こしていて、結構なズレが生じていた。
段差を上がったり下ったりとしている内に出口が見えた。
「そういえばさっきついでに情報をもらってきたとか言ったけど何?」
「あーそれか。それな。どうやら俺たち」
一呼吸入れて、レイは言った。
「ヘネシスを壊滅させた放火魔になってる」
「え」
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