「ヘネシスを壊滅させた放火魔になってる」
「え」
え?
そしてちょうどレイブンシティーを出る。
「俺たちが出た後すぐにヘネシスで大火事があって、町全体がほぼ全焼したらしい。ヘネシスはこういった大火事があると街から出ずに広場に集まって集団で避難するらしい。んで街から出た人が怪しいってことで最後に出た俺たちに容疑が」
「何その適当な理由。絶対どっかから圧力かかってるじゃん。見え見え」
「恐らくな。直接的に圧力をかけるならヘレナ様なんだかあの人はこんなことしないし、俺たちとは交友関係がある人だ。そう考えるとヘレナ様ではない。そしてヘレナ様ならたとえ圧力をかけられたとしても決して屈しる人じゃない。だからヘレナ様を通すことなく圧力をかけられる存在。俺たちに色々嗅ぎ回られると困る存在。政治的臭いもする。指名手配されているはずだ。だから一先ずスリーピーウッドにいる知り合いのところへ行く。まだ手が回っていないはずだ」
なるほどねぇ。さすが長年傭兵をやってきただけはある。戦いの実力だけじゃなくて推理も中々。
顔も広ければ、それなりの信頼もあるようだ。そう考えるとレイのことを知ってるお偉いさんたちなら違うと気づくはず。なら、ハインズ様やヘレナ様あたりに接触してもいいと思うんだけど。
「不満そうな顔だな」
「ハインズ様とかヘレナ様とかに無実を証明してもらうのは?」
「無実を証明する証拠もない。人望だけじゃさすがに民を説得することはできないだろ。英雄でもない、有名人というわけでもない俺たちだ。寧ろ傭兵は嫌われ者。何人も殺している俺たちなら尚更反感を買うだけだ。まずは俺たちの任務を終わらせるしかない。この件に関しては後回しだ。あぁ、もう歩ける」
肩から下ろすと何事もなかったように両足で歩いていた。弾丸が貫通して、足に穴が開いてるっていうのにどういうこと……。筋肉が切れていて普通歩けるはずがないんだけど。
しかも重い剣まで背負ってるのになんて体してるのやら。
「もう夜中だ。人通りの少ない今ならエリニアからスリーピーウッドへ向かった方がいいだろう。もちろんバンジージャンプはしないがな。ヘネシスと違って関所がないし。まぁ少し足に負担がかかるが……」
「無理しないでよ。今回はほんと厄介なことになりそうだし。綱紀粛正だっけ。政治関係の話になるならそうなりかねない。危ない連中ばっかりになる」
「ある意味危ない連中っていうのは俺らかもな」
深夜遅いせいかモンスターの数も少なく、人なんて一切見かけないようになっていた。エリニアに近くなるにつれて電灯がなくなっていく。
「空が……赤いな」
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