メイプルストーリー

おしゃべり広場

キャラクター名:
MeiouL
ワールド:
かりん

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創作物語

【創作】舞台裏の苦悩 第七話 日付:2012.08.12 19:30 表示回数:344

――第六話・少年S――




薄暗い遺跡の最下層。
湿気の強い空気と、至る所に生えたコケ類が、場の雰囲気の不気味さを語っていた。
時折崩れる床の上で舞う様に拳を振るう少年と、人間と牛を足して二で割った様な姿をした、一匹の獣が支配するその一室。

浅黒い体毛に包まれた獣の巨躯から繰り出される、馬鹿でかい斧での薙ぎ払い。
少年は自身の銀の髪が揺れるのを視界の片隅に捉えながらも、的確に迫り来る鉄の塊を掻い潜る。
度重なる金属音は耳を刺激し、飛び交う火花は一人と一匹の戦意をより奮い立たせた。

吠える獣。
中央ダンジョン――『呪われた神殿』のボス、ジュニアバルログは、目前に迫る銀髪の少年を見据える。
互いのHPゲージは、既に危険地帯に達していた。

振り上げられた斧は空を斬る。
縦に振られたソレを、少年は左足を軸にした回し蹴りで、大きく横へ弾いた。
意図的に生み出された、一瞬の隙。
分厚い肉体を鎧の如く身に纏う獣に、生半可な攻撃は通用しない。
獣の脇腹に一発、二発、少年は二度の打撃を繰り出すも、再度攻撃の手を回した。

「おおおおお――ッ!」

少年も雄叫びを上げた。
角を左右に振った後の斧による振り下ろし――少年が待ちに待っていた攻撃パターンであった。
その端整な顔を多大な疲労感に歪めながらも、少年は決して足を休めない。
振り下ろされた斧を右に平行移動して紙一重で回避。
床に深くめり込んだ斧を抜こうとするジュニアバルログの太腕に飛び乗った。
頭部まで上り詰めた少年は、そこから生える二本の角の内、片方の根元を強く掴む。

「貰ったぁああああ!」

獣の首上に置いた右足を支えに、手前方向へ力を入れる。
テコの原理を利用した力の加え方。
バキン、と焦げ茶色の角がへし折れた。

『ブモォォォォォォォォォ!』

悲痛に叫ぶジュニアバルログ。
へし折れた片角は少年の右掌に収まっていた。
頭を抱えて暴れまわるジュニアバルログを一瞥した少年は、背後に控える仲間たちに目配せをする。

――瞬間、入れ替わる布陣。

詠唱を開始した魔法使いの横を駆け抜ける、黒髪のハヤト。
何本もの光の矢を番えた弓使いは、牽制に三本の矢を放つ。
相変わらずの高い精度で狙い通りの軌道を描く三本の矢は、それぞれジュニアバルログの両足と胸に突き刺さった。
再度悲鳴を上げる獣。
そこへ――

「――《旋風斬》ッ!」

黒髪の少年が、鞘から引き抜いた刀で、蹲るジュニアバルログを斬り伏せる。
分厚い毛皮ごと獣の肉を断ち切った少年は追撃を目論むが、その必要は無い。

「――《サンダースピア》!」

透き通るような声色で、魔法使いは詠唱の完成を告げた。
前触れもなく突如として現れた、雷の槍。
槍を纏う雷は、巻き起こる砂埃を風へと流す。

象牙の閃光が、遺跡を覆い尽くしたその瞬間。
怒涛の攻撃に、声すら上げることが叶わないジュニアバルログ。
その頭上に浮かぶHPゲージに僅かに残る赤色は、見る見る内に左へ押しつぶされ、やがて無色になると同時にガシャンと崩れ去った。
薄い青色の粒子となって天へ登るジュニアバルログだったものを傍目に、四人は漸く安堵の息を吐く。

――パンパカパーン♪

脳内で再生されるファンファーレ。
銀髪の少年は、掌に納まる一つの角が、アイテムへと変貌する姿を唯見つめていた。

「……一先ず、帰還しよう」

銀の髪を右手でかき上げ、少年は爽やかに仲間たちに微笑んで見せる。
汗水滴るその姿に頬を赤く染める魔法使いと弓使い。
軽やかに、颯爽と光の扉へ歩み寄る少年。
その姿はまるで、絵本の中の英雄の様だった。




内三名が募集したキャラです。
しかし残念ながら職業は適当。
都合上ですm(__)m

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