「はっ! 君、大丈夫か? そんなに傷だらけで・・・・・・。まさか、これは里が襲われているところなのか・・・・・・?」
男の声がした。同時に、俺の体がユラユラ揺れる。
ここは天国なのか・・・・・・? こんな唐突な事件おこされて、みんな亡くなって――神様もさすがに地獄なんかに送らないだろう。
「おい! どうした? おい! 気絶しちまったのか? おい! 君!?」
男はドタドタした足音で駆け回っていた。
足音が近づいたり遠ざかったりしているのだから、恐らくこんな表現で大丈夫なはずだ。
「うわああ! だめだ次元の扉が閉じかけている! ・・・・・・ここにいられるのもあと数分ってことか」
足音が急に止む。
「どうする? どうする俺・・・・・・。この子・・・・・・この時代の子・・・・・・だよな? 話を聞ける状態じゃないし・・・・・・連れて帰る訳には・・・・・・。しかし、ここに置いていくのも俺の誓いに反する・・・・・・。くっそー。どうすればいいんだー!」
叫び声からして恐らくむしゃくしゃしているのだろう。
「歴史改変・・・・・・罪・・・・・・世界の倫理に反する・・・・・・。うぅぅ」
男の声は震えていた。
「千火様・・・・・・アーシア・・・・・・申し訳ない。俺は、俺の信じた道を行く!」
不意に、俺の体は宙に浮いた。誰かに支えられている気がする。
全身に風が当たる。男は俺をどこかに連れて行こうとしている・・・・・・のかもしれない。
「俺はどうなっても良い。罰を受けてもいい・・・・・・だからこの子を連れて元の世界へ――」
――その時、360度闇に包まれた視界が、一気に光に変わっていった。
|