「・・・・・・おい。生きてるか? ・・・・・・大丈夫か?」
誰かが俺の体を揺さぶる。俺もそれに応じるかのように閉じている目を開ける。
周りには・・・・・・見たこと無い風景ばかりだった。
「お、おお! 気がついたようだな。よかった。うなされていたから、一時はもう駄目かと」
よく聞いたら、少し前の男の声に似ていた。同じ人なのだろうか?
俺は見たことも無い風景を、何も分からない原始人のように目を見開いて辺りを見渡す。
「ここは・・・・・・?」
俺が喋ると、安堵したかのように男は微笑む。
「あ、ああ。混乱しているようだな。無理もないぜ・・・・・・」
少し苦い顔をしていた。俺はその反応にきょとんとする。
男は一回深呼吸をする。そして、俺の肩を掴んで、
「これから、君がとても驚く話をすることになる」
よーく聞いてくれ、と肩を握る力が増した。少し痛んだが、真剣な彼の姿だけに言える雰囲気ではなかった。
俺は男の言うことに息を呑む。まったく、何を言われるのか分かったもんじゃない。
「最初は信じられないかもしれない。しかし、今から話すことは紛れも無い真実だ・・・・・・。心して聞いてもらいたい」
とりあえず、早く言ってほしいということと、肩を握る力を弱くしてほしい――と訴えたい。
が、顔が強張ってあまりにも真剣なものだから――やはり言いにくい。
「この世界は、君がいた世界から約200年後の世界だ」
「え?」
今・・・・・・何ていったんだ? 200年後の・・・・・・世界?
確かに目が覚めたら分からないものだらけで戸惑った。だが、俺はなんとか目の前にある状況を理解しようと努力した。結果、浅い皮でなんとかガードしたようなものだが――どこかの栄えた城下町なんだろうと、そう言い聞かせていた。
だが、あの男が言っていた言葉はまるっきり次元が違った。
信じれない。いや、信じたくもない。しかし、俺が最もショックをうけたのは状況をなんとか理解させようとし、それが崩れたということではない。
何よりも、ここは俺の知る世界ではないこと。友人や、無月兄さん、由良師匠までもが・・・・・・この世界にはいないということ。
それはもう、絶望としか表せなかった。
「すまない。これは俺のミスだ。どうしても傷だらけの君を見捨てることができなかったんだ・・・・・・」
どうやら、この男が俺を助けた人であることに間違いはない。
こんな男一人を、見捨てずに助けてくれたことには感謝しなきゃいけない・・・・・・のかもしれない。
しかし、感謝の言葉が出てこなかった。それはまだ、心の整理ができていないのかどうか――それは俺にはわからない。
――そして、彼の次の言葉に、俺は大きく希望を持てるかもしれない言葉を聞いた。
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