メイプルストーリー

おしゃべり広場

キャラクター名:
Dora猫s
ワールド:
ぷらむ

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創作物語

薊の舞 14話 日付:2012.12.18 17:33 表示回数:360

「ははは。信じられないよな。ここから遥か彼方のジパングに、アーシアという人物がいてな、この人は時空転移ができるんだ」

男は後頭部をボリボリかいて苦笑いをする。その時、俺の脳に何かが引っかかった。
まだ希望を持てるのかもしれない。俺はまだ神様に見捨てられていなかった――そう思えた。実際に俺は、全滅ともいえるようなあの事件に生きている。見つけられている。
そして、俺の中枢部に刺激を与えたのは一つの言葉。その前に、

「どういうことだ?」
「詳しくは言えないけど、俺は上司の命令で・・・・・・200年前の世界へ調査に行っていた。・・・・・・そこで君に――傷だらけの君にあったんだ・・・・・・」

男の声はひどく掠れていた。どうやら、俺を助けてしまったことやこれからのことを考えていなかったのだろう。

「里のみんなはここにいないんだよな?」

もうこんなことを言っても仕方ないだろう。ただ、俺は抗いたかった。この男も、何回も同じ質問をされて苛立っているだろう。
それでも俺は、抗いたかった。

「俺は実際にその後をみた訳じゃないが・・・・・・うちの里には歴史書みたいなものがあって、それによると君のいた里は・・・・・・竜によって壊滅したそうだ」

竜・・・・・・ドラゴン。笑えない話だ。案の定、帰ってくる返答はほとんど同じ。
壊滅、全滅、分からないだの・・・・・・俺もそこらへんは聞き飽きた。だが、これは全て俺が抵抗したための答え。当然の返答をしてくれたまでだった。

「くそっ! くそっ! 俺たちが何をした!? 何もしていないだろう!!」

俺はそこらへんにあった置物に八つ当たりする。そうでもしなきゃ、自分自身が精神的にやられそうだった。現状維持・・・・・・ではないが、物に当たらなければ魂が飛んで生きそうだった。

「そんなに暴れないで」

男は羽交い絞めするように俺を抑えた。崩壊状態の俺をまだ抑えてくれる人がいる。俺はそんな彼の行動に少し安堵したのかもしれない。

それに、この男なら分かるかもしれない。さっきの言葉――
『時空転移』のことを。

「そのアーなんとかっていう奴のところに連れてってくれ!元の場所に戻してもらう。そして、里を、師匠を助ける!」

なんとか振りほどき、まるで貧乏人が貴族にお金をすがるように、俺は男に頼んだ。
もうこれしか方法がない・・・・・・会わせてくれないと俺は生きる希望を失ってしまう。そう彼に悟らせているのかもしれない。
しかし、俺の想像していたのとは違った反応が来た。

「駄目だ。それはできない。すまない。それだけは出来ないんだ。君がこの時代に来てしまったことで、歴史は改変された。これ以上の改変は・・・・・・世界がめちゃくちゃになっちまう・・・・・・」

男は必死に歯を食い縛り、何か出てきてしまうものを抑えていた。
俺もそれは同じだった。

・・・・・・完璧に生きる希望を亡くした。
そんな俺は無力だ。何も出来ない。アーなんとかみたいに時空転移もできない。無力だ、無力だ・・・・・・。

「結局師匠の力を譲ってもらってまで――」

ちょっと待ってくれ・・・・・・。
俺は師匠から基本的な部分の力を受け継いだ。その力があれば・・・・・・。

そうだ、俺には力がある。しかも、俺は自分自身と約束した。薊の花を握って――

復讐だ。俺の生きる希望――
――それは『復讐』だ。

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