メイプルストーリー

おしゃべり広場

キャラクター名:
上野原光
ワールド:
さくら

冒険手帳を見る

創作物語

新 珠蟲姫ものがたり80 日付:2013.08.12 10:57 表示回数:454

 エレヴ上層部。
 浮遊している薄気味悪い淀んだ空気が、地に手を伸ばしている月明かりを容赦なく喰らう世界。風に踊らされている無機質を裂きながら、赤髪の少女と男は前へ淡々と歩を進めていた。

「ヴァンレオンさん……エレヴってこんなに荒んでましたっけ?」
「他の軍団長がここを殲滅するよう命を下されていた。それを忠実にこなしたのだろう」
 亜羽季の脳内に、地球防衛軍に所属していたとき、エルナスへと何人兵を送っても皆、死体となって帰ってきていた光景がフラッシュバックする。
皆が無事であると、切に願う。本当に……。

「その軍団長ってどんな奴なんですか?」
「それは口が過ぎるな――と言いたいところだが、亜羽季ちゃんの職場、故郷、両方とも俺が壊してしまった。罪滅ぼしに話させてもらおう」
 ナインハートの手によって、姫一行がエレヴの地下深くにある城へと運ばれ一時間後、ヴァンレオンの所持していた瞬間移動石によって、エレヴへと投げ込まれた二人。焦土と化したエレヴの上層部を、シグナスを探し求め彷徨っている最中であった。


「名前はアカイラム。人外的な実験を繰り返し、命を平気で弄ぶ残虐極まりない老人だ。まあ、アカイラムに限らず、軍団長はどいつもこいつも腐った奴らばかりだったがな。無論、俺を含めて」
「ヴァンレオンさんはそんなことない! ヴァンレオンさんは……」
「亜羽季ちゃん。理由はともあれ、俺はもう自分でも数えきれんくらい人を殺し、いくつもの国々を崩壊させている。十分極悪人だ」
 “極悪人”の言葉に再び反論しようとするが、喉まで上がってきたモノを飲み込み、亜羽季は視線を地面へと落としてしまう。何かを必死に堪えている彼女の様子に、困惑が沸騰するがかける言葉が見当たらない。しばし、二人の間は沈黙が横たわる。
 終始無言のままシグナスを探し続け、時計の長針が早くも三、四周程回った。
 シグナスどころか、人一人いないエレヴ。希望ばかりが先走り、一向に結果に辿り着かない。顔を出し始めた陽が淀んだ空気を裂き、地を照らしていくにつれ、袋小路にも陽が差し込まれるかと思ったが、そんなことはなかった。
「なんで誰も……」

 長い沈黙を破った亜羽季の言葉に、 つかさずヴァンレオンは言葉を発する。
「残虐極まりないアカイラムのことだ。やはり、殺戮の限りをつくしたのだろう。シグナスも、亜羽季ちゃんの仲間達も恐らく――」
「そんなことないっ! 皆強いから絶対そんなことは……」
 言葉選びが悪く、煌々としだした彼女の陽にまたしても暗雲を覆わせてしまう。困惑した表情で外方へと顔を逸らし、必死にフォローする言葉を探そうとしたその瞬間、一日千秋の思いで捜索していた人物が視界に入った。

「シ……シグナスだ! やった! おい、探したぞ!!」
 シグナスの表情は荒んだエレヴのよう凍り付き、眼差しは冷酷そのものであった。視線を向けただけで反応一つしない彼女を不審に思いつつも、更に一歩、前へと踏み出そうと すると、肌を裂かんばかりの殺気を剥き出しにしてきた。

「ヴァンレオン……貴方が裏切り、葬ってくれたエルナスから全て頂きました。魔力は勿論、記憶も技も全て。妹の無念、ここで晴らさせて頂きます、覚悟をなさい!!」
「……違う! お前に話がある! 早まるな!!」

スタンプを押す

スタンプ(4

コメント

  • コメント(4

おしゃべり広場の一覧に戻る

変更する

×