ある人へ手紙を届けてほしい。
シグナス女王からの頼まれごとは只それだけだったが、意味は僕にとっては重い。
そのある人、というのは、僕の恩人でありながら、僕が一度殺しかけた人なのだから。
*偽勇の剣:01
そうだ、いい加減自己紹介をしておこう。
僕の名はシエル。シグナス騎士団所属のソウルマスターだ。
まぁ、事情があったりするので正式な騎士ではないのだけれど、名簿上はそうなっている。
今現在は運び物の任務を中心に活動している、大体の依頼人はシグナス女王だ。
「シエル、それ完全にパシリにされてないか」
「言うな。僕だって気が付かないようにしてるんだから」
さて本題へ話を戻そう。
リス港口、トゥルーの情報屋。
基本的に人影の少ないこの情報屋に、僕はいた。
そもそも手紙を届ける相手が、この情報屋所属の冒険者なのだから仕方ない。
出来れば早く出ていきたい気分だ。ここは、少々勝手が違うのだ。
「なんつーか、変わんないよなぁ」
「そっちは随分変わったよね、ていうか、こっちが素?」
「寧ろあれが本性だったら今頃死んでるわ」
彼。名前はイクシオン、略名イクス。
シグナスの手紙を渡す相手でありながら、以前旅をしていた仲間の一人。
……いるだけで問題が降りかかってくる面倒な人だ。
「とにかく、手紙は渡したけど。一体何の話なわけ? どうせろくなことじゃあないと思うけど」
「なんだその歪んだ信頼は」
「だってイクスだし」
「本当にかわんねーよなお前は……」
イクスはだるそうに受け取った手紙を開く。
先に読み進むたびに血の気が引いていっているのが、見てるだけでもよく分かる。
また何かやらかしたというのかこの人は。飽きないなぁ。
「連合会議に出席しろだと」
「……イクス、また団長相手に喧嘩したんじゃ」
「してない! 政府の一件以来連絡もとってない!」
「それ着信拒否されてるよね!? 完璧にブラックリスト入りしてるよね!?」
「そういうわけで俺今から死んでくる」
「生きることから逃げるなぁ!」
「シエルお前神喰やったんだな! 今度通信しようぜ!!」
「会議終わったらなぁっ!!」
このノリは現代に来てから恒例化しているので気にしない。
昔はこんなに親しくはなかったし、もっと殺伐としていたのだけれど、
まぁ、これもこれでいいか。彼にはもう随分と世話になったし、償いもされた。
「ん、おいちょっと待て」
「何?」
「これ、お前の席もあるみたいだぞ」
「…………は?」
「ほらこれ、招待チケット。ご丁寧に名前入り」
突きつけられた二枚のチケットにはそれぞれ、僕と彼の名前がしっかりと書かれていた。
おいおい、まさか? なんで僕なんかが連合会議に呼ばれなければならない?
「あれじゃね、女王の差し金」
「差し金っていうな!!」
スリッパであったが、実にいい音で突っ込むことが出来たのだった。
*
「あの少年騎士をどうしても巻き込みたいようだな、シグナスよ」
エレヴ、神獣の庭。
神獣は憂うように幼い女王を見る。神に仕えた獣には、既に分かっているのだろう。
少年騎士が何者なのか、そして次の会議に呼び込んだ、彼の正体すらも。
この後現れるであろう竜の子も、忍のものも。
「……彼らは、日の元にあるべきなのです」
シグナスは祈る。
何を知っているわけでもなく、何を知ろうと言うわけでもなく。
「忠告をしよう」
遠く、記録にも残らないほど遠くの過去。神獣は彼らの姿を見たことがあった。
只の冒険者だと思っていたが、彼らは英雄以上の存在だったのか。
「あれらは、災を招くぞ」
神をも狂わせた彼らが今一度。
(しかし、もうばれたのか。嘘苦手だな)
(いや、大体あんたのせいだよ)
*あとがき
登場キャラ募集いたします。
テンプレは
名前: 性別:
性格: 職業:
武器: 補足:
注意点としては、何が起こるかわからないこと。
唐突に敵として出てきたり、出オチになる可能性もあります。
物語としてはシリアスちっくに進めたいと考えているので、よろしくお願いいたします。
|