シエル=アーヴィン、イクス=モーガンの二名が地獄へご招待のチケットに呆然としている頃。
リス港口から少し離れた場所にあるカニングシティーにて、また一つ火種が動き始めていた。
「……貴方って所謂ツンデレ、ですよね」
「あぁん」
「認めてみると拒否するところも、やっぱりツンデレのツンですよ。貴方」
それもまた、また奇妙な二人組だったのだが。
*偽勇の剣:02
「……こんなヤツを英雄認定するとは、世も末だな」
「だから英雄でもなんでもないですよぉ。確かに、世は末かもしれませんけど」
彼女の名はエヴィン。エヴァンではなく、エヴィンだ。
ドラゴンマスターの、どこにいても変わりはないであろう少女だ。
ただ一部、経緯を除けば。の話ではあるが。
「ねぇニコライさん、どうせですから護衛として会議にきません?」
「断る」
「……もう」
ニコライはため息をつく。
過去に、というよりも数ヶ月前に彼女に命を救われ、恩を返すという理由でグループを
組んでいるのはいいものの、エヴィンという少女は、どうにもタイプではない。
まず自由すぎる。今の時代でここまで気ままに旅をしているやつは、殆どいない。
そして黒すぎる。どこまでもあざとく、どこまでも自分の為。
「個人的に、貴方にはもうちょっとアウトドアな体験をしてほしいところなんですが」
「なんでだよ」
「地味すぎて暗すぎます」
「俺の勝手だろう」
「でも一緒にいてくれるぐらいなんですから、もう少しぐらい心を開かせてもいいじゃないですか」
「……」
「むーっ」
そうやって可愛らしくこっちを睨んだって無駄だ。といわんばかりに
ニコライはエヴィンの頭へごすんっと矢の束で叩く。
痛くはないのだろうが、やっぱり不機嫌そうにこっちへ絡んでくる。
「……しかし、その会議。本当に参加するつもりなのか」
「あ、心配してくれるんですね」
「さっさと応えろ」
「むぅーっ、まぁ参加する気ではいますよ。珍しい方も出るらしいですし」
「珍しい?」
「そうですねぇ……ニコライさんが分かるところで言うと、「聖櫃の剣」の元祖保持者とか」
「…………なんだと?」
「確実に会えますよ、だって彼。元私の仲間だもの」
聖櫃の剣。ニコライが追い求めている剣のことだ。
大昔に暗黒の魔法使いを封印するために作られた、一振りの聖剣であり魔剣。
理由は今は語れないが、ニコライはそれを探し続けている。
それの保持者が、連合会議に出席する?これを逃せるはずはない。
「……護衛としてついていく」
「それじゃあ、お礼は保持者さんと引き合わせる。でいいかしら」
「十分だ」
「ふふ、楽しみ」
連合会議は次の満月の日。エヴィンはもう知っているのか知らないのか、
どこか沸き立つわくわくを、抑えるのに必死になっていた。
*
「……そういえば、この前調べていて分かったんだがな」
数日たったリーフロードにて、シエルとイクスはモンスターに襲われながら会話をしていた。
会議まではまだ三日もあるのだが、シエルはエレヴ関係者に顔が利く。
どうせだからという理由で、会議が始まるまで情報収集をするのが、イクスの目的だ。
友人を普通に利用するあたり、こいつかなり駄目な人間なのだろうが、
シエルはもうそんなには気にしていなかったし、シエル自身、同等の駄目人間なので、
何を言える立場ではなかった。
「歴史上だと「柩の聖騎士」って呼ばれてたらしいぞ、お前」
「なんだよそれ、変な呼び名だね」
「殺人鬼とかに形容されるよりかはマシじゃねーの?」
「そりゃそうだ」
ここらのモンスターは弱小なものが多いので、武器を出す必要もない。
適当に裏拳をぶちかませば倒せるレベルだ。
けれど、どうにもおかしい。普通の沸くスピードではない。
「……ねぇ、流石にさ。これは「異変」だよね」
「だな。またルィンヌあたりがドジったかと」
「困った女神様だねー」
山のようなザコモンスターの大群を前に、此処にいる冒険者たちは驚くばかりだ。
管理も雑なこの世界は
(生かされる俺たちも辛いもんさ)
(皆、不本意だっていうのに)
*あとがき
謎の組長Xさんより、ニコライさんをお借りしました。
引き続き人物募集はしております、応募は:01のコメへどうぞ。
一応世界観についてですが、クロスストーリー終了後というよりかは
「クロスストーリー過去編」終了後となっています。
交差物語、他のストーリーとの関係性は薄いです。ないことは、ないですが。
今後もよろしくお願いしま
|