そもそも連合会議というものは、冒険者の結束を強めるためという名目だが、
実際は組織や冒険者間でかなりのズレがある情報を「共有化」する為に存在する。
さて上手く情報を共有化できたとして、その先の対策はどうなるのか。
もしブラックウィングやその手のものと戦争になったなら、具体的な展開はどうするのか。
それを知るのは、戦争経験者のみというわけだ。そう、だからこそ、僕らはこの時代にやってきた。
愚者の崩落を防ぐために、僕らは世界を捨てて此処に来た。
*偽勇の剣:04
月日は流れて連合会議当日、ブラックウィングの襲撃が起きたのだ。
それはまぁさっくりと、連合会議を放置した冒険者枠の僕とイクスでどうにかしたのだが、
最後の一人、情報をはかせるために確保したその人一人が、少々厄介者だったらしい。
会議場の端でその最後の一人を捕獲したイクスが、困った顔をして此方に問う。
「なぁ、英雄さんがブラックウィングさんのスパイしてる件について」
「えっ」
「この人、今気絶してっけど……アランさんだ」
「はぁああああ!?」
僕は柄にもなく驚きの声を上げた。
英雄さんなにしてはるんですか。反抗期ですか。しかも一番危ないあんたですかなにしてはるんですか。
よくよく顔を確認したが、やっぱり彼は英雄アラン、その人であったのだ。
「ていうかイクス、よくアランさんを沈めたね」
「運が良かったんだろ。だがどうする? 会議に突き出したら英雄への信頼ががた落ちだぞ」
「うーん……適当に誤魔化そう。アランさんは基本裏方担当だし、事情があるんだよ多分」
「しかしまて、この人」
早く会議に戻らなければいけないのだけれど、実はこの鉾使いアランは、かなり厄介な人物なのを
イクスは重々知っているようだ。その次に放たれた事実も、まぁ厄介なのだ。
「二、三回は所属組織裏切ってる人だぞ?」
そう、この人は裏切り常習犯な最悪のウォリアーなのだ。
「……じゃあ、この手に持ってる妙な装置も。あれてきな何か」
「可能性はある。つかこれ、あれじゃね」
「「不正ポータル発生装置」」
「うわぁ」
僕はもう微笑むしかなかった。
*
騒動が起きてもなお不動を貫いたエヴィン、ニコライ、ヒールジールの三人は
結局最後の最後まで不動のまま、会議を終えた。いやなにせ、呼ばれただけだったのだし、
ニコライにとっては、その後が重要なのだ。聖櫃の剣。その保持者に会うこと、それだけが目的なのだ。
そんなわけで、ニコライはチームを離れ単独行動をしていたのだ。
エヴィンから情報は聞いているので、もう単独行動してもいいと判断したからだ。
男性、金髪、青い瞳、名はシエル。背は低い。コレだけ揃えばどうにでもなる。
どうにでもなる……はずだったのだが。
「まさか、迷った……?」
なんということだろう、ニコライはこんな小さなエレヴ島で迷子になってしまっていた。
地図支援の届かない領域に迷い込んでしまったらしい。とにかくニコライは焦る。
下手をするとせっかくのチャンスを逃しかねない。
さてどうしよう。これは不味い、とっても不味い。
「……だ、誰かいないかー」
誰もいない。
「おーい」
何もいない。
「……………詰んだ!!」
詰んだ。
そんなニコライの目の前に、救済処置のような、ただの偶然のような。
不器用に空間がひび割れた、ポータルが現れた。
なんの脈略も無いような、そんな雰囲気の。
「……飛び込むのは、まずないな」
そうつぶやいてスルーしようとした矢先。
ニコライは何者かによって突き飛ばされた。
いつのまにいたのか、それとも最初からいたのだろうか。
「はっ?」
状況も分からぬまま、ニコライはその不器用なポータルに飲み込まれてしまったのだった。
未開領域へ。
(やっべー検討違いなのを送っちゃった)
(アランさんお前マジで闇落ちしたんかオイこらまて逃げんな)
*あとがき
マジでノリです。
不正ポータルの設定はあったけれど、マジで使うことになるとは……。
引き続きニコライさん、今回名前だけでしたがヒールジールさんをお借りしています。
次はいつになることやら。
登場人物応募は01からお願いします。
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