メイプルストーリー

おしゃべり広場

キャラクター名:
戦x隼人x士
ワールド:
なつめ

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創作物語

君の元へ ♯32 日付:2014.01.16 00:38 表示回数:377

「だから・・・・・・はぁ。これだけ説明してもまだ分からないの?」
「・・・・・・ごめんなさい」
ピンクビーンは項垂れてため息を深くついた。そりゃそうだ。こんな意味不明な事を戦士バカである俺にいくら説明しても分かるはずもない。それでいてなおかつ、かれこれ数十回は説明をかみ砕いては俺に教えてくれている。全く、これが人ならかなりのお人良しとして慕われただろうに。

しかし、もし俺が頭を使うことが得意なやつだったとしても、このことばかりはなかなか分からないだろう。時間と記憶。どちらもこれと言った体形を持っておらず常に変化し続けている存在だ。今この瞬間も「過去」の出来事として蓄積されていっている。
時間と過去は類似的だ。過ぎて行った時間が増えれば、過去も増える。それでいて形の無い不規則的な物。


頭の中でイメージすることさえ、できなかった。


そんな様子の俺を見たピンクビーンは、重々しく口を開いた。
「君さ、本当にここに来ること望んでたの?情報を拒絶しているかのようにも見えるんだけど」
望んでいた事は本当・・・・・・なのか。自問してみるも、確信は得られなかった。が、ピンクビーンが何気なくいった一言で、それは確信へと変わる事になった。


「君確か、ここにくる目的は復讐だったよね?」

復讐。その一言で―――――――。

燃える村、血まみれの衣服、強烈なさびた鉄のにおい、真っ赤な空、泣きわめくみゆ、不敵な笑みを浮かべる一人の人物。己の力に酔いしれ、遂には闇の世界へと堕ちて行った一人の人物が作り上げたこの惨状。今だ変わらず不敵に笑う人物をただただ睨みつけ、激しい憎しみの心を持った少年、家族みんな殺され悲しみのあまり精神が崩壊しそうな少女。いつが復讐してやる。そう心に決めた数年前の出来事――――――――。


「ッ・・・・・・!」
突如胸が痛み、思考が遮断された。胸を抑え、いつの間にか拍動があがっていた心臓を深呼吸とともに落ち着かせようとしたが、なかなか収まらなかった。
忘れさろうと思っていても、まるで縫い合わせたかの様に忘れ去ることができず、このように唐突として思いだす悪夢。これが本当に悪夢だけで済んでいたのならどんなにいいことだろうか。しかし現実だ。血の匂い、死んだ人の冷たさ、辺り一面真っ赤で染まっている、それらすべてを感触として覚えてしまっている。



「・・・・・・結構相当だね。」
「・・・・・・かもしれないな。」
「――――改めて聞くけど」

そこで少し溜めを作ったピンクピーンの目を俺は直視した。さすが異世界の住民だ。メイプルワールドで出会ったモンスター達とは一風変わった雰囲気を持っていて、なおかつそれが畏怖を感じさせる。ずっとふざけていたせいで忘れていたが、こいつは生きている次元が、格が違う。俺たち人間が到底及ばないような域で生きている。

どこか神々しさが感じられたのは、そのせいだろう。

だがそんな相手を俺はただ、じっとピンクビーンを見ていた。畏怖も次元の違いも力の違いも全て認識したうえで、俺は決めていた。


「・・・・・・君は過去に戻りたいと、思ってるの?」

「・・・・・・思ってる。」

真剣な口調でそう言った。


それに対してピンクビーンは、ただただこちらを見つめるだけであった。

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