メイプルストーリー

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キャラクター名:
だら助
ワールド:
かえで

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創作物語

蓮美端道の生徒壊潰し 79話(完結) 日付:2014.02.01 01:23 表示回数:332

「愛積!?」
「端道君!!」
 菊池先生の後ろから愛積が飛びだし、僕を抱き締めてくる。
「ええ!? 蓮美先輩ええ!?」
 駒形が驚愕のままに視線を泳がせているが、僕の驚愕はもっとだ。困惑と驚嘆が濁流の様に理解の障壁をぶち破り、僕を混乱の境地に導いていく。
 驚愕冷めやらぬなか僕は愛積を抱き締め返すが、理屈はともかく愛積をまた抱き締められた事実に感動して、僕は愛積を強く、強く抱き締め続ける。
「青春だ! これが青春だー!!」
 駒形がなぜか感動した様に涙を流すなか、菊池先生はそれを淡々と眺めていた。
「感動の対面はそろそろいいかな?」
 催促されて冷静に戻った僕は、愛積を抱き締めたまま菊池先生に視線を移す。
「そうだ!! 何で愛積がいるんだよ。菊池先生、貴方『愛積の事は知らない』って言ったじゃないですか。嘘だったんですか? 僕を騙したんですか!?」
「ああ。騙したよ」
「ぐ……!!」
「樹君が頼んできたから、私は君を騙した」
「なっ!? 愛積!? まさか君は……」
 抱き締めるのを緩め、僕が肩を掴むと愛積は視線を逸らす。
「端道君、ごめん。でも私が繚乱学園に転校するって言ったら貴方、とめたでしょ」
「とめるさ!! 愛積!? 君は……ああ、何て真似を。何で繚乱学園に……!!」
 僕は歯を食い縛り、菊池先生を睨みつける。
「まさか貴方が愛積を……」
「違う! 違うわ端道君!! 私が菊池先生に懇願したの。繚乱学園にいれてほしいって!!」
「私は教師だからほら、志願者を意志を尊重するさ」
「……ッ!!」菊池先生の胸倉を掴み、憎悪の溢れるままに拳を振りかぶる。
「駄目!!」だが愛積はその腕を掴むと、僕を菊池先生から離した。
「駄目だよ端道君。それじゃ謳歌学園にくる前と変わらない」
「僕は変わらないさ!! 謳歌学園にいく前も、いった後……も?」
 愛積が真剣な表情で僕の瞳を見据えていた。その表情に、僕も冷静を取り戻す。
「全然違うよ。だって私が居るじゃない」
 愛積は微笑むと、素っ頓狂な顔をして駒形に視線を移す。
「駒形君も居る。端道君の最終目標は菊池先生を倒す事なんだよね?」
「そうさ。僕の青春は、菊池先生を倒したその瞬間に終わる」
「青春、か。なら……――」
 愛積は視線を戻すと、僕の頭にぽんと掌を乗せた。
「私達も居るんだよ。友情とか、恋愛あっての青春じゃない?」
「……。……!!」
 想像もしなかった。
 僕の菊池先生を倒すという最終目標。その目標を駒形や愛積と共にするなんて。
「いいのか……」僕は声を震わせる。
「僕の青春を、君達と重ねてもいいのか……?」
 駒形が微笑んだ。続いて愛積も微笑み、僕の頭をぽんと叩く。
「当然でしょ!! 端道君の青春は私達の青春。私達の青春は端道君の青春よ」
 僕の青春は僕のものだと思っていた。菊池先生を倒す最終目標も、母親の墓前を訪れるもの僕だけの物語だと思っていた。だけど、違うんだ。
 僕には友達がいる。恋人がいる。青春を共にする仲間がいる。
 僕の青春は僕だけのものじゃない。駒形の青春も駒形だけのものじゃない。愛積の青春も愛積だけのものじゃない。瀬田も、数原も、斜峰も、摘葉も、狩野も。
 皆の青春は、皆のものなんだ!!

「僕等は! 仲間なんだ!!」

 どぅうん!! ……と青春が、世界が開けた様な気がした。
 菊池先生はそんな僕の姿を見て薄らだが微笑むと、校舎のなかにはいっていった。
 僕等もそれに続く形で、深緑の豊かな並木道を駆け抜ける。
 青春は辛い事がたくさんだ。でも楽しい事もたくさんある。
 だから僕等は青春を懸命に駆け抜ける。青春の後に続く、『夢』に憧れて。
 愛積や駒形が校舎に駆け込むなか、僕は空を仰ぐ。
 見渡す限りの快晴だった。明日もきっと、空は快晴なのだろう。

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