レオは微笑み、防御している刀を押してハヤトの長剣を弾き反動で後ろへ跳躍し左手を逆手に右手を中段に構え上体を沈み込ませる。それに対してハヤトも再度長剣を中段に構えると右半身の体勢を取る。
「勝負は一瞬だぜ」
「それはこっちも同じだよ」
レオとハヤトはそういい終わると同時に駆け出す。レオは右足を軸に回転すると同時に左手の刀で足元をすくうようになぎ払うがハヤトは予想していたのか長剣を地面に突き刺しレオの刀を受け止める。
「っち、読まれてたか……仕方ないなっと」
レオは更に回転の速度を利用して右手の刀を切り上げ追撃する。それと同時にハヤトも長剣を地面から引き抜いて上体を沈み込ませながら左袈裟に切り下ろす。刹那「スパン」という心地のよい音と共に二人の甲冑に蛍光塗料の後が奔る。
「あー、また引き分けか……」
レオは頭を掻きながらハヤトに向かって微笑む。
「これで三千三百一戦二百勝百敗三千一引き分けだね」
「俺は百勝二百敗三千一引き分けだぜ」
「でも、完成したんでしょ? 『葬濤の型』は」
「ああ、そういうお前こそ最後の奥義体得できたみたいだな」
「レオのお陰とは言いにくいけど、おかげさまでね」
「俺が『葬濤の型』を会得出来たのはハヤト、お前のおかげだ……恩に着る。ありがとう」
レオは、ハヤトに向かって頭を下げる。ハヤトも困惑した表情を取っていたがレオの気持ちを組して「こちらこそ、ありがとう」とレオに頭を下げた。その後二人は握手を交わし、「これからも頼むぜ相棒」と微笑みあう。
その頃には模擬戦闘もほとんど終わりかけており、結果としてはレオの小隊がハヤトの小隊の奇襲を打ち破り里の防衛に成功、指揮官二人は相打ちという結末を迎える事となった。
「とりあえず、初めての模擬戦闘は成功ってところかな」
「ああ、初めてにしては、上々の出来ってところだぜ」
「レオ、号令かけてくれる? たまには任せるよ」
「俺が号令? 似合わないなそれ」
「僕も似合わないと思うけどさ……レオが締めたら雰囲気が引き締まると思うんだ」
「そうか……なら仕方ないな」
レオはそう言うと
「まず最初に言うぜ、お疲れ様だ。初めての模擬戦闘にしては上々の出来と言っていい、だがな……国王軍は小隊以上の戦力を誇っているのも事実だ……模擬戦闘だけで満足せずに基礎訓練もないがしろにしてはいけないぜ? とりあえず今日はこれで終わりだ。もう一度言う、お前らお疲れさん、それじゃあ解散っ」
レオの一言で猛者たちは「初めての模擬戦疲れたな……」「よし、皆で飲みに行こうぜ」等を口にしながら解散していく。
「隊長たちも飲みに行きませんか?」
後ろから声をかけられたレオとハヤトは振り向き、ハヤトが声の主に名前を尋ねる。
「君、名前は」
「私はルーガ=フィンと申します。配属小隊はレオ隊長の部隊です」
ルーガと名乗った青年は、レオとハヤトに向かい微笑む。
「それで、隊長たちは飲みにいかれますか?」
「僕、お酒はあんまり強くないからねぇ」
「そうそう、ハヤトの奴なんて、昔飲みに行った時なんて……」
レオがその続きを言おうとしたときだった。ハヤトが腰に佩いた刀を抜くとレオの喉元に刃を突きつける。
「レオ? それ以上言ったら本気で切り掛かるからね?」
「すみませんでした……」
「判れば宜しい」
ハヤトは抜き身の刀を鞘に収め、レオに微笑むとルーガに対し「今日は止めとくよ」と断りを入れる。
「そうですか、また後日お誘いしますね」
「ああそうしてやってくれ」
ルーガはその返答を聞くと駆け足で去っていく。その後ろ姿をレオとハヤトは手を振りながら見送った。
「僕がお酒を飲むと大変なことになるからなぁ……」
ハヤトは少し照れくさそう言う。
作者コメント
次回、ハヤトはお酒を飲むとどうなってしまうのか?
まず間違いなく次回はネタ回になります、そしておそらく21話くらいでシホちゃん久々の出番が来ます
コメント返信はここからー
KエルッK様
そのフラグ回収するか回収しないかはあとあとのお楽しみということでww
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