「見張りが居ない……? 私が留守にしていた間に何があったんだろうか」
ハヤトが酔い潰れた次の日の早朝……人狼の里入口で一人の少女が疑問を口に出していた。
「まあ、入ってみれば判ることか……久々の故郷だしゆっくりさせてもらおう」
少女は棍を担ぎ上げ、一歩ずつ里へと入っていった。
「なんだ? いつの間に里は軍隊の駐屯地になったんだ」
里に入った少女は軍隊の天幕を眺めながらそう呟く。
「これもしばらく歩けば判るか……ん? あの音は剣撃……?」
更なる疑問を胸に少女は音のした方に歩いて行く。
「ハヤトっ、飲んで次の日の修練ってのは結構身体に負担が掛かるだろっ、今日こそ俺が勝つ」
「幾ら飲んだ次の日とは言えど、勝ちは譲らないよ……最低でも引き分け……もしくは僕が勝つ」
少女が音を頼りにしてたどり着いた先で見たものは、騎士団の鎧姿をした二人の男が真剣を持って立ち回っている姿だった。
「ハヤト、お客さんだ……ちょっと待て」
レオはどうやら少女の気配に気がついたらしい。ハヤトに静止を掛ける。ハヤトも疑問に思ったようだがレオの静止に従って武器を収める。
「出てきなよ、何もしないさ」
レオの声に少女はレオとハヤトの前に姿を現す。
「貴方方は……王国騎士団ハヤト団長とレオ副団長? なぜここに」
少女は疑問に思ったことを口に出して質問する。
「正確には元だがな」
レオは少し苦笑いを浮かべ少女の質問に答える。
「君は確か……僕の隊に居たよね? 国王の監視が厳しいのに良くここまで」
ハヤトは少女に見覚えがあるらしく労いの声を掛ける。
「ハヤト団長……覚えてくれてたのですね……改めまして名乗らせていただきます、シエ=ガルヴァと申します」
シエと名乗った少女は短く切った銀の髪を風に靡かせながら一礼する。
「ガルヴァ……シホの姉か妹さんか」
「妹をご存知なのですか」
シエはレオに迫る。レオは少したじろぎながらもシエの問いに答えた。
「ご存知もなにも、俺は一度刃を交えたからな……あの国王の命令で……」
「先陣が貴方だったのですね……出立した部隊が一人残らず帰ってこなかったので……あのあと直ぐハヤト団長も居なくなって……国王が……更に異民族の差別を……わたしの友達もっ……」
シエは顔に涙を浮かべる。それを見かねたハヤトはすかさず話を切り替える。
「泣いてる途中で申し訳ないんだけどさ、僕とレオがここに居る理由なんだけど捕縛されたら反逆罪で死刑になるのは覚悟して国王軍と戦うつもりで陣を張ってるんだよ……もちろん妹さんも了解の上でね。シエさん、再び僕たちの陣に名を連ねて欲しい……一刻も早く争いを終わらせるために」
ハヤトはそう微笑みながら言う。その言葉を聞いたシエは更に瞳に涙を浮かべながらも力強く頷いた。
「あと俺たちは今現在騎士団長でも副団長でも無いから普通に呼び捨てで呼んでくれたらありがたいんだが……堅苦しいのはやっぱり苦手だ……」
レオは頭を掻きながらシエに頭を下げる。シエは一瞬驚いたように目を見開いたが、考えておきますと笑みを浮かべた。
続く
作者コメントー
今回は少しシリアス回
今度機会があれば、ハヤトの酒癖編を短編で書きたいと思います
次回、シホちゃん登場っ
ほのぼの+ネタが織り交ざるそんな感じの回になると思います
こっからいつも通りのコメント返信ー
KエルッK様
まぁリアルだったら100%二日酔いパターンですよね
謎の組長X様
完璧超人に見せかけて実は物凄く酒に弱いのがハヤトですww
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