「シエさんの実力を知りたいと思います」
朝食を食べ終わった後シエとシホが席を外しているあいだにハヤトは不意にそう言い放つ。
「まぁ確かに実力を知るのは必要だが……誰が相手するんだよ」
「幸いにもシエさんの武器が棍だから、僕とレオの二人で良いんじゃないかな、長物にも慣れておきたいし」
「確かに一利ある、シホは俺の隊と戦闘したとき人狼族持ち前の反射神経とか身体能力で長物相手は出来てたらしいからな」
「じゃあ決定だね」
ハヤトとレオは自分の武器だけ持つとシホの家から出て行く。
「おねえちゃん、ハヤトとレオの二人がウチの里の人を訓練する時間なんだけど、見てくる?」
シホはシエに対してそう質問してみる。
「私が行っても邪魔にならないかが心配なんだけど……見てきてみようかな」
シエは少し戸惑いながらそう返す。
「里の皆から聞いた話だけど、最近は模擬戦闘を中心にして実戦形式で訓練してるみたい」
「ハヤトさんとレオさんの実践訓練……私も少し受けてみたいかな」
「まあ、あの二人もおねえちゃんの実力も知りたいだろうし受け入れてくれると思うよ」
「じゃあ行ってくる」
シエは壁に立て掛けてあった棍を担ぐとシホの家から出て行く。
「久しぶりに私も後で見に行ってみようかな……最近訓練不足だから腕が鈍ってたら嫌だし……」
シホは姉の背中を見送りながらもそう一人で呟いた。
――広場にて
「なんだろ、あの人だかり……何かあったのかな」
シエは広場に出来ていた人だかりに近づく、そこで耳にしたのは人狼の猛者達が賭け事をしている声だった。
「レオ隊長に今晩の酒を掛けるっ」
「俺はハヤト隊長に昼と晩の食事を掛けるっ」
「貴方たち、何に掛けてるのよ……」
シエはため息を吐きながらも猛者達の目線の先に目を向ける。そこではハヤトとレオが実戦さながらの訓練をしていた。
「そろそろ時間だ……決めさせてもらうぞハヤトっ」
「それをそっくりそのままお返しするよ、レオっ」
鞘に刀を収めたままの状態でお互いの剣気が高まり、二人は同時に踏み出す。
「届けっ」
「閃けっ」
「「一閃っ」」
ハヤトとレオは同時に刀を抜刀し横に薙ぐ、刀同士が接触し火花を散らしながら甲高い金属音を辺りに響かせる……。
「珍しく抜刀術なんて使ってみたけど……なかなかうまくいかないもんだね……」
「まぁ、お前の剣だと抜刀術には向かないからな、それでも抜刀術を極めたら多分負けなしの剣になるだろうけどな」
「レオこそ、双剣の抜刀術なんて使うもんじゃないでしょ普通は」
「ああ、双剣は手数勝負の武器だからな……奇襲戦に対応出来るように開発段階ではあるんだが使ってみる価値はあるって事が判ってよかった」
「丁度待ち人来たるってところかな」
ハヤトの声でレオはシエの姿を確認する。
背の高い猛者達に紛れては居るが確かにそこにはシエの姿があった。
「おまたせ、レオ、ハヤト」
「待ってませんよ、レオといい訓練の時間が取れましたから」
「俺もハヤトと同意見だな、最近二人の訓練の時間が取れてなかったしな」
二人はシエに笑いながら話しかける。
シエも到着した時の呆れた表情が幾分かほぐれ、顔に笑みを浮かべていた。
作者コメント
そろそろ書き溜めが底を付くので続きかいてます
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