ガッ!
リース「! 逃げろ!」
物音の正体を即座に判断することができたリースはアリアに罵声を放つ。
しかし、アリアは動けなかった。
ドォン!という音と共に銃弾はアリアの腹を貫いた。
一発ではない。まるで蜂の巣のようにたくさん被弾してしまった。
アリアの体が90度傾き、倒れる。
しばらくの間、静寂になった。
リース「・・・!!」
リースは何かを思ったのか、ヒュン!と体を動かし、アリアの体を持ち上げ
またどこかへテレポートした。
警官「1人は死亡したか・・・?逃げられたが、おそらくほかの警官がサーチ済みだろう。
次はあの鉄塔だな」
アリア「が・・・ぁ・・・」
リース「アリア・・・!アリア・・・!!」
これ以上ないぐらいアリアを抱きしめた。
まだ息はある。息はある。息はあるのだが、
もう数分で意識を失いそのまま・・・
リース「あああぁぁ!?」
リースは叫んだ。理由は簡単。頭の中によぎった雑念がとても残酷であるから。
リース「アリア・・・死ぬな・・・!この人間の住む街、2人で絶対生き残るって・・・!」
返事はない。だが、まだ・・・、ほんの少しだけ息がある。
その時。
警官「どこだ!どこに隠れた犯人!」
すぐ近くに彼らを狙う警官の声が聞こえた。
リース「!」
気づかれないように、上へ、上へと階段を上がっていく。
もちろん、1人なんかじゃない。アリアをおんぶして、2人一緒に。
階段を全て登り終わり、その先にはひとつのドアがあった。
そのドアは、ドアノブにたくさんのホコリがついていて
そのドアは、いかにもとても昔に作られたようなもので
そのドアは、彼らに逃げ場を示しているように思えた。
リースは1つの異変を感じる。
そのドアの隙間から、とても明るい光が差し込んでいる。
リース(・・・!まずい!)
現時刻はもう朝7時になっていた。太陽はいつものように光り輝いているだろう。
『昼間には出るな』
これは、昼間にアリアが書斎で頭にはいった言葉。
リースもこの言葉の意味を知っている。
人間の住むこの世界に、たった2人だけ、人間の形をした『何か』である2人は
太陽の光を浴びると死ぬ。らしい。
アリアが書斎で、アリアの母とリースの父は・・・と、言ったが
彼らも最悪の決断を迫られ、外に出て死んでいる。
天気予報を聞いていた時に念のため、と用意しておいた日除け用の傘も、
どこかへ落としてきていたようだ。
警官「! 誰だ!そこの2人、止まりなさい!」
後ろから、またひとつ悪のささやきが話しかけてくる。
リース(俺たちの親は・・・立派に生きた。だが、人間がこんな経済を良くしようと
しか考えていない政治のおかげで俺たちの仲間は次々と襲われ、死んで・・・。
親まで、そんな理不尽な死に方して・・・
俺たちの仲間、俺たちの親を殺した人間が憎い!
だから、ここで決める。
これ以上、人間になんて身をあずけたりしない!!)
そして――――。
こうして、降り出しに戻り、また新たな人・・・ではない、人の形をした『何か』が
彼たちと同じように死んでいく。人間達は、どうせ気づいてないだろう。
人間とはそんな、信頼できない動物なのだから。
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