メイプルストーリー

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キャラクター名:
Dora猫o
ワールド:
あずさ

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創作物語

空白の玉座 第8話「無敗の男」 日付:2014.12.07 23:02 表示回数:492

先陣を切ったのは余裕を失くしたエル=ベルトラン。これまでの彼の行いを見れば、彼の強さ故に先制を譲ることは多々あったはずだ。これこそ正に彼の持つ余裕だった。しかし、実際問題このコルトバ=ユースという男に苦戦を強いられている。余裕などない、与えさせない――コルトバの意思が焦燥感を煽り、無意識に攻撃という信号を肉体に伝えていたのだ。
「貴様といると腸が煮え返る。早々にその意を毀させてもらう」
 悪魔を呼び寄せる逸話を持つ魔剣デュラハン、一般人が両手で持つのも難しい大なる剣を片手で持ち、軽々しく刀身を地面と水平にして横になぎ払う。常人では成しえない程の速度且つ精密さ。確実にコルトバの頭部を狙う軌道であった。
「いつまで力に溺れているつもりだ」
 通常ならば体を屈めているであろうこの攻撃の回避を、コルトバは半袖半ズボンという極めて身軽な格好を特徴として生かし、大きく跳躍する。エルの大柄な身体から、斬撃の位置は高かったはずだが、いとも簡単にその位置を飛び越える
 更に、コルトバの行動は回避のためではなかった。跳躍のため足は極限まで屈折している。加えて、攻撃の位置より高く跳んだため、今攻撃できる部分はエルの頭部だけなのだ。彼の足の状況は至って蹴り易い。ただ力を込めて足を伸ばせばいいだけなのだから。
「オラッ!」
 エルと同じ水平の軌道を沿って足を振り回す。暗黒の鎧を纏ったエルも、頭部には兜を被ることはなかった。故、生々しい殴打の痛みが彼の頭に響き渡る。
 コルトバもまた、蹴った感触を得ていた。一度エルの頭に足の甲が触れたその刹那、振り回した遠心力に加えて「思い」という力を思いのたけ降り注いだ。
 今度こそは、空振りなどしなかった。
「ぬるい痛みだ。だが、何故だ――何故こんなにも痛い」
 決して仰け反ることのない攻撃だった。エル=ベルトランにとっては虫が周りで右往左往しているようなもの。何せ彼は無敗の男にして無傷の男なのだから。彼にとって、今のコルトバの蹴りは傷つくことはない。
「これが・・・・・・意思の力か!?」
 信じることのなかった『意思』。この力こそが、コルトバの物理的攻撃を増幅させていたのだ。
 ふざけるな、エルは叫んでデュラハンを振る。まるで、今の自分の心のぼやけを払拭するかのように。
 正に悪魔の雄叫び――デュラハンから生じた風圧がコルトバの体が宙を舞う。体勢を崩し、まだ着地もしていなかったので受身を取ることもできず、無防備に固い雪の道に投げ出された。その隙に、エルは仰向けになって倒れていたコルトバの心臓を狙う。彼の高精密な攻撃かつ、硬直し現状を把握しきれていないコルトバ。魔剣の先端は吸い込まれるようにコルトバの胸部に迫る。
「ッ!?」
 気づく時には遅かった。
 蜻蛉切りに近い魔剣デュラハンの先端は確実にコルトバの肉を抉り、地面にそのまま突き刺した。赤色の鮮血が隙間から漏れ出し、悲鳴の声も聞こえた。だが、彼の驚異的な反射によって致命傷を抑えた――結果、彼の左肩内部の骨にはヒビが入り、貫通まではいったが、体の外側を損傷したため、大きな被害を負わなくて済んだのだ。もし、少しでも彼の反射力が劣っていたとしたら、剣の先端はもう少し内側により、完全に串刺しになっていたはずだ。
 エルは思い通りの結果に傾かなかったのに対して機嫌を損ねたが、それでも彼は口角を吊り上げて嘲笑する。
「幻滅した。意思の力とやらはこの程度の来襲でもかわせぬというのか」
 コルトバは、自分の血によって紅にそまった雪を転がり、エルとの距離を測る。
「たったの一撃にしてその様か」
 左肩を抑えながら、荒く白い息を吐く。見習い騎士は策などなにも持たない。いや、考える程の経験量が足りないのだ。
故に彼は突っ込んでいく。恐れ知らずに勇敢に立ち向かっていく。
「生憎雪山育ちの田舎者なんでね。体力だけは自信があるのさ」
 先ほどの跳躍力も生まれてきた環境が授けた武器なのだろう。彼はもう一度大きく跳躍して剣を振るう。
「これが――意思の力だ!」
 隙の生じる構えで太刀筋も悪い。エルがこの斬撃をかわすのは容易いことだった。その時、やはりコルトバという男は、結局自分の力にひれ伏すのだろう、そう思った。
 だが、驚くべきはこの後だった。
 振り下ろした白銀の剣を瞬く間にエルの腰に仕込ませる。直接エルの体に触れることはなかったが、幾多の血を吸い上げた暗黒の鎧にヒビが生じた。そして、僅かに仰け反ったエルを更に追い込み、負担をかけるかのように鞘を取り出して思いっきり腹部を突いた。
 鎧越しでも分かる鈍い痛みがエルを襲う。その後、痛覚さえも無視し、今度はコルトバの行動を予測し剣の軌道を変えるが、それすらも先読みされ、更に連打を浴びせ

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