メイプルストーリー

おしゃべり広場

キャラクター名:
jbhvjv
ワールド:
かえで

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創作物語

浮遊:89 日付:2014.12.13 21:41 表示回数:535

浮遊:89



トラックの線上をハイペースで走る男がいた
8分49秒の持ちタイムのある藤堂だが、決定的に足りない、と、痛感していた
それは全中記録に28秒届かないことである
挑戦者は常に、最悪のケースを想定して調整しなければならない
藤堂は、全国大会出場は確実だったが、日本記録に一歩でも近づかねば勝てないのが全国大会である
標準突破タイムを出すなら記録会で十分
が、順位を取るのはそことは違う
藤堂は、去年どうしても勝てない人間がいた
中学陸上で現在最速
8分25秒
名門、兵庫氷上大附中の雨ノ大路と呼ばれる3年生である

去年の全国、圧倒的な差を見たのを覚えている
手を伸ばしても追いつけない、1位と2位、たったそれだけの、絶望的なまでに厚い壁が、藤堂には見えた

そんな時だ、海江が、力の差をイメージしたのは

しかしそれは、悲しみに暮れるだとか、我が評価の損失だとは言わなかった
新しいスタートにようやく立てた気がしたのだ

次の試合、きっと奴は、日本記録を塗り替えるほどの力を付けてくる
だから俺は、一つでも遠くそれを越えないといけない


藤堂は静かに失速していって、自らのタイムを見る
8分29秒
それを見て、彼がどのような顔をしたのかは知らないが、一周400もある広大なトラックを、彼は歩き出す
それは、満足というには程遠いものである

たまに聞く話で、陸上は元のフィジカルではなく、技術が求められるという
身体能力が高くても、フォームが悪ければ、それこそ無駄な動きでタイムを落とし、リレーに至ればチーム戦
いかに上手により早く落とさずにバトンを繋げるか
そして、あとの一つは根性
有名な選手のエピソードが思い出される

電柱が来たら、そのまた次の電柱までは本気で走ろうと、限界のさらに上限を作る選手がいる
最後の一歩まで失速することなく、限界を知りそのまた上を作って戦った男
それが、今の全中記録保持者たる男だ

藤堂は少しだけ、体を休ませるとまた、同じ道を走り始めた

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