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コンビニにたどり着くと、すぐさまエリオット達は店長に事情を説明した。
すると店長はやる気のなさそうに奥の部屋へ案内する。
その部屋にはモニターテレビが設置されており、二十四時間監視カメラの映像が映されていた。
椅子に座ると、エリオットは手慣れた様子でモニターテレビを操作し始めた。
「一時間前の映像から見てみよう」
続けてモニターテレビを操作した。すると画面には、およそ一時間前の監視カメラに映っていた映像が流れる。
「監視カメラを何個も取り付けてくれて助かるな。これで広範囲の映像を見れるぞ」
二人は映像を見続けていた。
するとレイモンドと思われる人影がコンビニへ入ると、そのすぐ後にトミーのものと思われる車が信号前で停車した。
「見てみろ、トミーのスープラだ。オレンジメタリック色のA80型。そしてこの外装カスタムは十中八九間違いない。レイモンドの証言通りだと、そろそろトミーを拉致した黒人達が現れる筈だ」
エリオットが呟いた時だ。
コンビニの駐車場に駐車していたワゴン車から黒人達が一斉に降り始め、棍棒等の凶器を持って停車中のトミーの車へ走り出した。
その時、黒人達の中でただ一人、監視カメラの方を向いて笑みを浮かばせた男いた。その男を見た途端、エリオットは一瞬凍りついた。
「こいつ知ってるぞ! 素手での殺しで有名なマックス・ミラーだ!! サウスブロンクス一帯を牛耳る凶悪なストリートギャング、ミラー・ファミリーの副リーダー!!!」
レイモンドが一人叫ぶのに対し、エリオットは沈黙している。
その様子を見てレイモンドは「どうした」と声をかけると、我に返ったかのようにエリオットは呟いた。
「マックスは……俺が大学時代だった頃の同級生であり、友人だ。なるべくヤツの件については触れたくなかったんだが……こうなっちゃ仕方がない」
エリオットは椅子から立ち上がった。
コンビニを出るとパトカーのトランクを開け、そこから対凶悪犯罪者用に用意されている散弾銃や突撃銃を手にとり、コッキングレバーを引いていく。
どうやら戦闘の準備をしているようだ。
「おいエリオット。トミーの居場所が分かるのか?」
「いいや。だからトミーの動きを待つのさ」
「どういうことだ?」
「トミーは何が何でも拘束から抜け出そうとする筈だ。奴が生きていればその地域は派手な銃撃戦が始まるに違いない。警察無線に連絡が来れば、その地域にトミーが居るって訳だ。あくまでも俺の勘だがね」
「なるほどな。まあトミーが生きてれば、の話だけどね」
「生きてるさ。なんたってトミーは全米一の悪運の持ち主だぞ? それに俺の勘はよく当たるんだ」
「はははっ。それが本当だといいけどな」
レイモンドが鼻で笑いながら言った。二人は驚くほどリラックスしていたのだ。
トミーへの絶対的な信頼、そして不思議なほどの安心感。
如何に強大な敵が相手であろうとも、トミーがくたばる筈がない。
そう確信しながら、二人はトミーの行動を待ち続けた。
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