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「まずい……弾がねえ」
トミーは散弾銃・M870に弾を込めた。
それが最後の一発だった。
倒したギャングの亡骸から弾を探る暇もなく、次から次へとダニ共は湧いてくる。
もうどれだけの数を相手にしてきただろうか?
散弾銃で敵を吹き飛ばし、接近戦となれば銃床で殴りつける。この繰り返しだ。
流石のトミーも、無傷で大勢の敵を相手にして逃げ出すことは不可能に思えた。
「いたぞ、あそこだ!」
正面からニ人のギャング達が迫ってきた。
トミーはコンテナ製のゴミ箱の陰にいったん身を隠す。しかし轟音とともに、相手のショットガンが放たれた。
一瞬早くゴミ箱の陰から顔を出したトミーは、目の前にいた敵に向けてM870を撃つ。
弾丸はもうない。
しかし残りは一人だ。
M870を地面に置き、トミーは残弾数が残り二発の、475ウィルディ・マグナムを抜く。
ひとつ大きく息を吸い込み、ゴミ箱の陰から大きくダイブした。
空中でギャングに狙いを付け、475ウィルディ・マグナムのトリガーを引いた。
しかし弾丸は発射されなかった。
「……なんてこった! こんなとこでかよ神様ァ!?」
トミーは一瞬、この状況を理解できなかった。
弾詰まり(ジャム)だ。
これは自動装填銃の決定的な弱点であり、妨げる事は出来ない。
起こるとしても僅かな確率だが、今回トミーが使用している475ウィルディ・マグナムは古い拳銃であり、整備もあまりされていなかったので、比較的に弾詰まりが起こりやすくなっていたのだ。
そして、先ほど横へ跳びながら射撃をするという無茶な撃ち方をしたので、これにより弾詰まりの確率はさらに上がっていたのだ。
「ジャムりやがったか。惜しかったなトミー」
笑みを浮かばせながら、ギャングはトミーに向けて拳銃を向けた。
「そ、そうだアンタに俺の口座番号を教えてやるよ! 残高は百ドルにも満たねえけどさ、今ならコンビニ弁当も付けてやるぜ!? だから見逃してくんない!?」
「ふん」
ギャングは鼻で笑い、引き金に指をかけた。
「だぁあああよせ! よせって! まだ俺は結婚すらしてないんだぜ! やめてよォ!」
トミーは言い逃れをしようと、最後まで生きる努力を続けた。
その時、奇跡が起きた。
銃声が聞こえた。
直後、目の前のギャングが頭を撃ち抜かれて倒れた。
そしてトミーの前に現れたのは、拳銃を突き出しているエリオットだった。
「大丈夫か」
「助かったぜエリオット! ありがとよ! 今ならお前からプロポーズを受けても断れねえな!」
「バカ言うな。それに俺は既婚済みの事を知ってるだろう。冗談は後にしてここから逃げるぞ」
散弾銃・M870を拾い、ギャングの亡骸から弾を探りながらトミーは言った。
「はいよ。それにしても相変わらずいい腕してるぜ」
「お前ほどじゃないさ」
エリオットは鼻で笑った。
ギャングの亡骸から奪った弾で、トミーはM870の弾を込めると、475ウィルディマグナムで先ほど弾詰まりが起こった原因の薬莢を排出させ、最後の一発を装填する。
「よし……帰り道まで案内を頼むぜ」
「準備完了か? それじゃあ行くぞ!」
トミーは鷹揚に頷いて笑うと、二人はその場を走り去っていった。
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