13
トミーは何があったのかをエリオットに語った。
物事を大げさに言うことはトミーが得意とすることだが、今となってはそんな必要もないだろう。
「そうか、デュークにまで目をつけられる羽目になるとはな。お前もこれから大変だろう」
「人気者の辛いところだぜ。俳優とかの気持ちが分かった気がする」
トミー達は笑みを浮かばせながら、路地を駆け抜けていった。
角を曲がると、そこには一台のパトカーが停車していた。
エリオットは「あれだ」と呟き、二人はパトカーに向かって路地を走り抜ける。
辺りはまるで戦場だ。
火災が発生し、あちらこちらで銃声や爆発音が聞こえる。
しかし、それもこれで終わりだ。
エリオットはそう思いながらパトカーの扉を開け、エンジンをかけた。
「よし、あとはマンハッタンまで一直線だ」
「……エリオット。帰る気満々のところ悪いが、このままミラー・ファミリーのシマへ行こうぜ」
信じられない発言にエリオットはトミーを見つめた。トミーもエリオットを見返す。
「よく考えてみろ。ここの住民達はちっぽけな武器で街のダニ共と闘ってるってのに、警官の俺らだけ逃げるってのはおかしいと思わねえか」
「トミー……」
「俺だって命は惜しい。もうじき騒ぎを聞いて州軍が暴動鎮圧しに来るだろうがな、少しはニューヨーク市警も格好いいとこ見せてやろうぜ?」
「そうだな……お前の言う通りだ。それにアイツとの決着もついちゃいない……行こう」
トミーは街の住民達の為に。エリオットはマックスとの決着をつける為に。二人は警察官としての誇りをもって、街へ戻る決意をした。
犯罪は根絶やしにしなければ、害虫のように増え続ける。
しかし、仮に犯罪を絶滅させても、形を変えて、より一層強くなりながら再び姿を現してくる。
警察官としての誇りがあるのならば、それに対抗し続けるだけだ。
そう思いながら、二人はミラー・ファミリーのシマへ向かった。
「おいトミー! 奴らのシマが見えてきたが、様子がおかしいぞ」
「なんだってんだ……ん!?」
トミー達はミラー・ファミリーのシマを凝視した。
そこには一台のヘリコプターが着陸しており、離陸準備を始めていたのだ。
「まさか奴ら、ヘリで逃げようとしているのか!? くそッ、間に合え!」
「あー。多分間に合わねえな」
言ったその時、トミーはドアウインドーを開けた。そこから身体を出し、走行中のパトカーの上へと登る。
「な、何をするつもりだトミー!?」
「車を止めるなよエリオット! 今から瞬き禁止だ! トミーさんのスタントをよく見ておけ!!」
「……まさかトミー」
「その、まさかさ。さあ飛ばしてくれ!」
エリオットは「落ちるなよ!」と叫び、アクセルを全開まで踏んだ。
パトカーは最高速度に達し、離陸をしようとするヘリコプターに向かって一直線に突っ込んでいく。
その時、ヘリコプターは離陸し始めた。
「ギリギリ間に合った! 飛べトミー!!」
エリオットは叫んだ。
その時には既に、トミーは飛んでいた。
離陸し始めたヘリコプターに乗り込むには、パトカーを踏み台にして、ヘリに飛びつくしかなかったのだ。
トミーは手を伸ばした。
ヘリコプターの左脚にその手が届いた。
「よっしゃァ………あぁあ滑る! ちょ、ちょっとまって、滑る! 落ちる!! 死ぬ!!!」
「なんとか持ちこたえてろ! 俺は地上から追跡する!」
「たたたた、頼んだぜエリオット!」
叫び、トミーは体制を立て直すと、懸垂の要領でヘリコプターの脚によじ登り、片手で散弾銃・M870を窓に向けて撃った。
窓は木っ端微塵となるが、強烈な反動でM870を落としてしまった。
しかしそれに構う暇もなく、腕を突っ込んでロックをはずし、開いた扉からそこに踊りこんだ。
「へっ。逃がさねえぞデューク」
「……トミー!?」
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