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「よくここまで来れたな。歓迎するぜ」
デュークが呟いたその時、ギャング達が一斉に飛びかかってきた。
トミーはそれらを殴り倒し、デュークに襲いかかった。渾身の力を込め、顔面めがけて拳を突き出す。
しかしデュークは、それを軽々と片手で受け止めた。そしてため息を吐くとトミーの首を掴み、床へ叩きつけた。
そして何事も無かったかのように呟いた。
「チッ……使えねえ部下共が。たかが一人のサツ相手にも満足に倒せねえのか」
トミーはその場で悶絶していた。
常人の数倍はあるその筋肉量で、勢いよく床へ叩きつけられたのだ。デュークにとっては、赤子を投げ飛ばすような感覚なのだろう。
「い、痛ぇ……あんたギャングなんか辞めて、プロレスラーにでもなった方がいいんじゃないの?」
「ほう。まだ軽口を言える気力は残ってるようだな。俺の部下に欲しいところだぜ」
「あんたの部下ァ? ピザの配達員になった方がマシだぜ」
「フン、偽善者ぶりやがって。俺らの仲間になれば命だけは助けてやろうと思ったんだがな。もうお前に用はない。死ね」
「へっ。言っとくがな……俺はまだ殺される気なんてないぜ」
呟いたその瞬間、ホルスターから素早く475ウィルディ・マグナムを抜いた。
それを操縦席に向けて放つ。
すると弾丸は操縦者の胸を貫通し、機体のコントロールが不安定となった。
ヘリコプターは大きく左右へ揺れ始める。
「チッ……余計な事をしやがって!」
激しく揺れる機体の中を駆け抜け、デュークは慌てて操縦桿を握った。
必死に操縦桿を握るも、トミーが乱入したせいで機体はコントロールを保ちきれず、次第に高度を下げはじめた。
その激しい揺れから、ギャング達が次々とヘリから放り投げられていく。
トミーもその例外ではなかった。
「ヤベえ……ちくしょう! 神様助けてぇ!」
彼はしぶとく生きていた。
放り投げられたその直後、ヘリの脚に掴まったのだ。
だが体力的にも限界寸前であり、ズルズルと手汗で滑っていく。
その時だった。
「クソッタレが! 俺一人では落ちねえぞ! テメエも道連れだ!」
ヘリから放り投げられたギャングがそう叫ぶと、トミーの脚にしがみついた。
「ちょ、重量オーバーだぜアンタ!」
「うるせえ! 知ったことかよ!」
「お……落ちるって! 離……あぁあああ!」
ついにヘリの脚から手が離れ、トミーはギャングと共に落ちた。
俺の悪運もここまでか?
走馬灯のようなものが見え始め、トミーは死を確信した。
しかし奇跡が起きた。
トミーとギャングの二人は、落下して数秒も経たない内に地面へ着地したのだ。
「痛っ……あれ。地面ってこんなお空と近かったっけか」
トミーは足元を見下げた。
すると緑色の石のようなもので出来た、建物の上に立っている事が分かる。
そこからの光景を眺めると、トミーは思わず呟いた。
「こ……ここって、自由の女神像の頭上じゃねえか」
トミー達は幸運な事に、自由の女神像の頭上へ落下したのだ。
高さ90メートル前後あり、落ちればまず助からない。そう考えたトミーは「俺高所恐怖症なんだけどなあ」と、怠そうに呟いた。
その時、機体を安定させたヘリコプターが女神像の頭上へ無理矢理着陸して来た。
デュークがM79_グレネードランチャーを構えながら降りてくる。咄嗟にトミーは475ウィルディ・マグナムをホルスターから引き抜こうとするが、弾切れである事を思い出し、黙ってその場に突っ立っていることしか出来なかった。
「悪運が強いって噂は本当らしいな。だが、今からお前を殺す事なんて容易いことだぜ?」
デュークが笑みを浮かばせながら呟いた。
トミーの顔には、苦笑いが浮かび上がっている。
その様子を見てデュークは鼻で笑った。
「そこでだ。弟のマックスはお前のお陰で助かったんでね、一つチャンスをやろう」
「マックス……エリオットから聞いた事があるな。奴がそうだったのか。しかしチャンスってのは一体?」
「簡単な事だ。今ここでマックスと武器無しの決闘をする。もし勝てたらここから逃がしてやるが……負けたら突き落とす。簡単だろ?」
「デスマッチって事ね……いいよ。どうせその方法でしか俺は助からねえんだ」
トミーは拳を鳴らし、手足をプラプラと振った。対してマックスは首を軽く回し「来いよ」と呟く。デュークはトミーの方に視線を傾け、眉を上げながら言った。
「言っておくが俺とマックスはミスタチオン関連筋肉肥大という特質をもっていて、筋肉量が常人の数倍はあるぜ。それにマックスは裏格闘技のファイターで無敗を誇ってる。お前に勝てるか? 」
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