メイプルストーリー

おしゃべり広場

キャラクター名:
Dora猫o
ワールド:
あずさ

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創作物語

空白の玉座 第14話「終焉」 日付:2015.02.03 18:18 表示回数:504

「・・・・・・聞きたいことがある」
 うつ伏せになって倒れた状態のエル=ベルトランは、出血量と、凍える土地の環境から体の感覚が蝕まれていくのを自覚し、己の死を悟り始めていた。
 対してコルトバ=ユースは、先ほどまでは死を境界に戦いを繰り広げていた敵だというのに、今じゃ心配そうな様子で此方を見ている。エルにとってその行為は侮辱、または皮肉に値するものだ、と思ったがそんなことはどうでもよかった。
 エルは固まって言うことを聞かない首をなんとかコルトバの方へ傾け、彼に問う。
「貴様にとって、レティナ=フォン=ヘレメリカとは、どういう人物だ?」
「守るべき人、ただそれだけさ」
 それだけだ。コルトバにとってそれだけの理由があれば十分なのだ。
 そこで、今まで一人の騎士を見守ってきた幼い姫レティナが此方に歩み寄って来る。エルが狙っている人物をコルトバは知っているのか、コルトバは左手で彼女を制した。しかし、エルが「危害は加えない」と一言加えると、その左手を下ろす。
「レティナ姫・・・・・・貴様にとって、コルトバ=ユースとは、どういう人物だ?」
「私も同じです。コルトバさんは私が守らなければならない人。それはコルトバさんだけではなく、この国の民全員にもいえることです」
「随分立派なものだな・・・・・・。俺は少々この国を見くびっていたらしい。たかが一つの小さな国如き、いつものように滅ぼせると高を括っていた。その非礼、どうか詫びさせてもらいたい」
 頭を下げることが出来ないため目を数秒間瞑り続けた。しばらくして、目を開けると二人は顔の表情を和らげ、微笑んでいた。それに対し、甘いのだな、と思いながらも、身のうちに秘めていた思いごとも晴らしたことで、ようやく死を覚悟することが出来た。
 しかし、そこでコルトバの口が開く。
「なぁ、あんたベルトランって姓だったよな。田舎住みだった俺でも分かるけど、ベルトランって確か、超名門の騎士一族じゃなかったか。たまたま同じ姓だったら悪いんだけど、なんであんたは騎士道をそんなに嫌うんだ?」
 ベルトラン家。
 騎士なら誰もが知り、誰もが憧れる騎士一族。あまりの強さに国の権力すら強奪できるほどと言われていた。
「確かに、俺は貴様の言うベルトラン家の生まれた者だ。そして、そのベルトラン家も俺を最後に終わる」
「どういうことだ?」
「サラブレット――代々ベルトラン家は誰も太刀打ちが出来ない最強の人間を造り上げようとしていた。それが俺だ。俺という個体を生むために全ての費用を注ぎ、人間の構造を知るに知り尽くして俺を産んだ。親や従者は俺に戦闘に関する知識だけを与え、最強の肉体を造り上げるためだけに育て上げた――その過程として、執拗に騎士道を叩き込まれた故に俺は騎士道というのを忌んでいるのかもしれないな。戦なんてのは常に死と隣接している。それなのに何故、その戦に礼儀など必要とするのだろうか?」
「俺にも分からねえけど、それが騎士の在り方ってもんじゃないかな。騎士にとって主に誉められるのって、超嬉しいしさ。俺も、姫さんとは騎士と主っていう関係じゃない気もするけど、やっぱり誉められるのって嬉しいもんだよ」
「フン・・・・・・生涯孤独だった俺には到底理解できない在り方だな。ただ、俺がそれでも騎士道を語ってきたのは、皮肉にも騎士道を叩き込まれてきた故なのかもな」
 今のベルトラン家には先代のような力を持っていない。先代のような財産を持っていない。
 ベルトランの実態を聞いたコルトバは顔を俯かせていた。その様子にエルは嘲笑を含めて口角を吊り上げる。
 そして、満身創痍の彼は手と足を大の字に広げて、
「語ることはもうない――さぁ、この無礼な姿を晒すのは羞恥以外他ならない。さっさと殺せ」
 全てを曝け出して目を閉じた。
 やれるべきことはやった。ベルトラン家の全てを尽くして造り上げた体――サラブレットのエル=ベルトランをもっても敗北してしまった。それがまだ、敵が複数の場合なら反論の余地はある。しかし、今回の場合は1対1の、いわば決闘だ。お互いの真剣勝負で彼は負けた。
 ――もう満足だ。
 しかし、ここで今度はレティナの口が開く。
「私はあなたを殺しません。しかし、あなたをこの国にずっと置くことは出来ないでしょう。あなたがこの国を侵害しないというのなら、しばらくの間、ゆっくりしていってください」
 笑顔で、彼女はそう言った。
 こんなに幼いのに強い。エルの半分を満たすかどうかの身長で、顔立ちにはまだ全然子供っぽさが残っている。大人としては半人前の人間なのに、エルは再び敗北感を覚える。彼女にも勝てないんだろう、とどこかで悟った。そして彼は“負けを認める”というのを始点に、物事を認めはじ

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