メイプルストーリー

おしゃべり広場

キャラクター名:
戦x隼人x士
ワールド:
ゆかり

冒険手帳を見る

創作物語

託すこと 日付:2015.03.11 20:12 表示回数:456

一言で言い表すとしたら、惨劇。餅は赤く燃え、仲間は倒れ、自分自身も満身創痍でどこか現実味を帯びない現実が少しずつ感覚的に遠のいていく中、近づいてくる恐怖の足音。

おそらく部隊は壊滅。生きている者がいるとしてもそれは無力で、けっ今日は仲間全員平等に殺されるだろう。

―――忌むべき足音はさらに近づく。

意識は徐々に、着実に失いかけている。もはや物を見ることが叶わない中、俺は自分自身を悔やんだ。
この世界に対して何も訴える事ができなかったと、なんて自分はこんなにも無力で儚い存在なのだ、と。

小さな村で生まれ育ち、世界を救いたいと思い、村を発って兵士となり、そしていつしか仲間の命を背負って行く責務のある分隊長となった。
数多くの戦場を駆け巡り、たくさんの仲間を失った。悔しさを知った。選択の後悔を嘆いた。勝つために何をすべきなのかを必死で考えた。

だが得られたものはなんだ?死ぬと分かっていても戦場へ行く勇気か?仲間が倒れても突き進んでいく精神力か?
どれもこれもとてもじゃないが「幸せ」と言えるようなものではない。
単に人としての人格が廃っていくことだらけだった。

そして今、このザマだ。もうまともに体は動かないだろう。
世界の人々を救えるためなら死んでもいいと思った。それが義務であり、この身をささげていいと思った。
けれども、誰かを救うことが叶わず、ただただ仲間の死を見届けながら死んでしまうのはあまりにも、辛すぎる・・・・・・。


そんなことを思っている間にも怪物の足音はさらに近づき、そして止まった。
あぁ、もう俺はここで死んでしまうのか。あっけないな。
自身が数多の無念の渦の中へと消え去っていくのを自覚し、生に対し、この世界に対して諦めをつけて別れを告げようとした

その刹那。


「おい、そこの兄さん、生きてるか。」
若くてありがあり、温かみを帯びた男の声が聞こえた。

援軍か・・・・・・いや、この状態で援軍を送るのは得策ではないと普通は考える。
だとしたら、なんなのだ。誰なのだ。
突如と現れた男で色々と混乱した。しかし、男が言う言葉が全てを変えた。
「ここら一帯にいたブラックワイバーンの群れは殲滅しておいたぜ。」
敵を殲滅。
その言葉を聞いて、驚きなんて感情よりも、安心という感情が芽生えた。
何故か心が安らぎ、とても温かく包まれているような感覚に襲われた。
そしてふと自然に思う。

この圧倒的力、人に安心を与えるこの男なら、世界を救えるかもしれない、と。


「あんたが一番酷そうだから、先に応急手当するぜ。」
そう言って男は何かを地面に広げる音が聞こえた。
多分、救急キットか何かだろう。
助かる。助かった。その事が嬉しく思う。しかし自分の最期くらい分かっている。だから俺は残された力を振り絞って声を放つ。

「仲間を・・・・・・さき、に・・・・・・たす、け・・・・・・」
弱く、かすれた声。しかし意思を乗せたその声は、男の心を動かしたのだろう。
ためらいながらも、わかった、と言って移動しようとした。

その最中、俺はほぼ独り言の様な呟きで言う。


「この、世界を・・・・・頼、んだ・・・・・・」

聞こえたのだろうか、俺には確実に確かめるすべはない。
ただ、確かに言えるのは、手を握る温かな感触があったこと。
多分、大丈夫だろう―――。






青年はふと思い出す。
戦火の中、自分より仲間の命を優先させた一人の隊長の事を。世界の平和を俺に託してくれた一人の男を。
・・・・・・あの隊長の様に、自分が死にかけの状態でも仲間の事を考えれるだろうか。

―――わからない。

「おおィ、何ボサっと考え事してんだ?暗黒の魔法使いはお前が迷ってる状態で勝てる相手じゃないぜ」
「んな事はわかってる。俺がすべきことはただひとつ―――」
そう、俺がすべきことはただ一つ。


「暗黒の魔法使いを倒して、世界に平和をもたらすのみ!!!」


覇気のある声で自身を鼓舞し、力強く目の前にある大きな扉を開ける。


開け放った扉の奥でくすぶる邪悪なオーラに不敵な笑みを浮かべながら、ゆっくりと、背負っている鉾に手をかける。



俺は勝たなければならない。


それは自身のためではない。


俺に未来を託してくれた今まで出会った人のため、そしてなにより―――



世界の平和を守るために―――。


-------------------
どうもお久しぶりです。
・・・・・・創作って書くの大変ですよね。

スタンプを押す

スタンプ(2

コメント

  • コメント(1

おしゃべり広場の一覧に戻る

変更する

×