メイプルストーリー

おしゃべり広場

キャラクター名:
アミセウス
ワールド:
さくら

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創作物語

ロイド・ガール 27機「霞む視界」 日付:2015.04.03 11:34 表示回数:440

「此処ここ。コーヒーが美味しいんだ。」
稲葉君が指差したのは、ちょっと古ぼけて、それでいてお洒落な感じのカフェだった。
ドアを開けると、「いらっしゃいませ」のいの字も、「何名さまでしょうか?」のなの字も耳に入らず、目の前には薄暗い空間が広がっていた。
「何此処…、カフェじゃないじゃない。」
ちら、と稲葉君を見てみるけれど、連れてきた本人といえばしれっとした顔で「そうだね」とだけ呟いていた。
コツ、コツ、とヒールが地面をつつく音がする。ぼんやりと、正体不明の影が、より一層不安を煽り、私は少し身構えた。
「こんにちは。お待ちしておりました。…ツインテお嬢様。」
「た、たまごかさん…?」
私をツインテお嬢様と呼んだのは、他でもないたまごかさんだった。
きゅっと結んでいるはずの口元を、ふっと緩めて微笑む様は女神と見紛う程に美しく、それが此処の不気味さを更に深めているようでもあった。
「ほらほらたまごか。俺たちは客。まず言う言葉はいらっしゃいませ、でしょ?」
稲葉君とたまごかさんは、知り合いのようだった。そして稲葉君はこの場所を知っているようだ。「客」がいれば「店員」がいる。そうともなれば当然此処はお店となる。
「すみません…。ここは本当にカフェなんですか?」
意を決して私はたまごかさんに聞いてみた。するとたまごかさんは少し私に近寄って、怪しく口元を歪めた。
「そんな訳無いじゃない。じゃあ、何だと思う?」
「そんなの分かりませっ―――――?!」
首を絞められた。不意を突かれた瞬間に、手足を何かで縛られた。
何これ、動けない。早く取ってよ。痛いよ。
「何するんですか?!」
「何だっていいんじゃない?あんたがそれを知った時点で、今の状態が変わるとは到底思いもしないけど。」
その瞬間、バッと何かが撒かれて、私の周りは少し霞んだ。ちょっと開いた目は、遠くの人影を微かに捉えていた。




――――――――――――――――――
「……う…。」
ゆっくりと目を開ける。頬に感じる硬さと冷たさ。起き上がると、それがコンクリートであることを確認した。
「…っ、」
その時私は、隣から微かな物音を聞いた。
「―――――エルくん!?」
「―――――小梅ちゃん?!」
どうして此処に、と聞こうとして、踏みとどまる。別れたばかりの元彼に、すぐに話をするほど私は無神経なヤツじゃない。沈黙が走る。しばらくしてエル君が口を開いた。
「どうして、此処へ?」
「稲葉君に連れてこられて。エル君は?」
「俺はアクアに。」
「彼女?お幸せに。」
「ちがっ――――――」
エル君が反論しかけたそのとき、パン、パン、と乾いた拍手の音がそれを遮った。
「はいはい夫婦喧嘩はそこまで。あらまだ薬が効かないの?」
たまごかさんだった。後ろに精神さんと稲葉君、そしてアクアちゃんを引き連れて、苛立ったように言葉を紡ぐ。
「薬ってなによ…貴女、私に何飲ませたの?」
「飲ませてないわ。」





「打ったのよ。ちょっとだけ。」

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