メイプルストーリー

おしゃべり広場

キャラクター名:
珈琲びすけ
ワールド:
あずさ

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創作物語

天使の声(前編) 日付:2015.04.05 20:31 表示回数:404

賑やかな笑い声。希望に満ち溢れた彼らを祝福するかのように薄紅色の花びらが空に舞う。
この胸の締め付けは、遠い過去に失った輝きへの羨望なのか、共に歩めない後悔なのか、どちらなのだろう

校門から小夜が出てきた。胸には黒っぽい筒を抱え、満面の笑顔で大きく手を振る。
僕もそれに応え、手を振り返す。永遠にあの可愛い笑顔を見続けられると信じていた。だけど神はそれを許さなかった。なぜならそれは自然の摂理に逆らう行為だったから。

小夜が飛び跳ねながら大きな声で叫ぶ。だけどもう僕には届かない。ゆっくりと首を振り、聞こえないことを彼女に伝えた。小夜の笑顔がみるみる泣きだしそうになる。小夜の涙は見たくない。そして僕の涙も見せたくない。小夜に背を向け、僕はその場を後にした。



出会いは極々平凡なものだった。だけど小夜と目があった瞬間、僕は衝撃のあまり、その場に立ち崩れていた。何が起こったのかちょっとしたパニックだった。それが僕にとって生まれて初めての恋だったからね。小夜が近所に住む中学三年生と分かったのは、それから何日か経ってからで、さらに僕を悩ませることとなる。誰でもそうだろう?25歳の男が15歳の少女に恋してしまうなどあり得ないことで、もし仮に在ったとしても分別をわきまえた大人なら、気の迷いだとすぐに忘れるだろう、だけど僕にはそれが空を飛ぶ以上に不可能に思えていた。

心の葛藤をよそに僕は毎日、小夜と会っていた。正確には会わずにはいられなかったのだ。寝ても覚めても小夜のことばかり。まるで心に焼き付いたように離れない。無垢な少女が僕に好意を寄せれば寄せるほど、得も言われぬ罪悪感がむしろ心地良いとすら感じていた。
だがそんな歪な愛を神が見逃すことはなかった。



「それでね智子がさぁ%$2w#$、ビックリしちゃった」
いつの間にか小夜のとの会話に雑音が混じるようになっていた。最初は稀だったものが日を追うごとに雑音が大きくなり、会話に支障を来すまでになっていた。耳の病気を疑い耳鼻科にも通院したが何の異常も見つからず、目に見えない小さな小さな溝のような不安を僕らは感じ始めていた。そんなある日、僕はあの老婆と出会ってしまったのだ。

(つづく)

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