一番奥に寝室へと続く階段があり、部屋が両隣に二つずつ備わっている通路の、階段から数えて来て右側の二番目に、物置部屋があった。
「ここよ」
暫く掃除してないのよね、と扉を開ける際、小声で言った妖精の言葉を、私はしっかり聞いていた。
「どうぞ入って。色々あるから注意してね」
電気を付けていない室内は、当然の如く暗かった。少しして、天井から吊り下げられている魔法石に光が灯る。
それまで暗闇に包まれ、良く見えなかった室内が、今なら良く見える。
金具で両サイドからキッチリ固定され、埃を被り、銀色から灰色へ変貌を遂げたホルダーと共に壁へ落下しないよう嵌められている刀剣や斧、槍。
それと同じように、斜め左下を向いてホルダーに包まれた小さな銃器の類と見れる物。部屋の中心にスペースがあり、何かが入っているであろうダンボールが円を描くように置かれている。幾つかのダンボールの上には更にダンボールが積み重なっている物もあった。当たり前の如くどれもこれも埃を被っているようで、御世辞にも綺麗な部屋とは言えなかった。
「スイッチ式で灯りが付くんですか?」
余りに悲惨な室内の光景から目を逸らす。
「ええ。やってる事は電気と変わらないわ、入り口の大きい魔法石から魔力を供給してるだけよ」
「あの魔法石からはそんなことも出来るのか・・・・・・」
「言ってなかったかしら? ・・・・・・さて、始めましょうか」
「え? ―――始めるって、何を?」
そう問うと、彼女は自身の服のポッケに手を突っ込み、袋に入った未開封のマスクと軍手を二人分取り出した。
そして、こちらを向いて神妙な面持ちで言う。
「一年前の今日、朝食はなんだった?」
「えっ・・・、覚えてないです」
突然の問答に動揺を隠せない。
「私も同じよ」
妖精の目は何処か遠くを見ているようだった。
察するのはそう難しい問題ではない。
「覚えて、ないんですか?」
「最後に整理したのがいつかすら忘れたわ」
絶句する。それはつまり、
「この部屋から探すんですか?」
彼女は頷き、言う。
「〝少年よ、楽な事など有りはしない。〟」
何処かで聞いた事がある言葉だった。
|