―――――――――エーデルシュタイン 市街地 某喫茶店
テーナの「超魔回転三重蹴」によって遠くエーデルシュタインまで飛ばされたTAXIの運転手と我らが主人公、トイ。その後TAXIの運転手に帰ってもらい、彼を助けた謎のビクトリア朝の衣服に身をまとう青年に連れられて入った喫茶店で、トイはファントムの身の上、そしてこの町に差し迫っている状況について説明を受けた。
トイ「つまり、鉱山を拠点とする暗黒の魔法使いの残党たる『ブラックウィング』とやら がこの街を支配しつつある、と。そういうことでいいんですか?」
ファン「その通りだ。そして、彼らに対抗しようとする組織がある。」
トイ「その組織とは?」
すると、彼が声を潜めて言った。
ファン「レジスタンス。文字通り、【抵抗者】だ。正式名称をエーデルシュタイン義勇軍と言う。」
レジスタンス。レジスタンス、か・・・
トイは心の中で数回その名を繰り返し、その流れるような、かつ崇高ささえ感じる響きに頷く。
―――――――――テーナには、例を言わないといけないかもしれないな。
トイ「ファントムさん。」
ファン「ファントム、で構わないが?そして敬語も必要ない」
トイ「なら、ファントム。俺をその組織の本部に案内してくれないか?この街を見ると、全体的に・・・こう、深い闇に沈みこんだような雰囲気に包まれている。街中でなにゆえ自由に会話できない?声を潜める必要がある?おかしいだろ?」
ファン「・・・! わかった、案内しよう」
ファン(若いながらのこの気迫・・・瞳に感じるなにか巨大な力・・・)
ファン(こいつは・・・まさか、【冒険者】か?)
ファン(可能性は十分ありうるな・・・)
ファン「ところで、トイ・・・と言ったか?お前、出身はどこだ」
トイ「ああ、メイプルアイランドだけど」
ファン(メイプルアイランド・・・!やはり受け継がれていたか)
ファン(いや、今は彼をレジスタンスのもとに連れて行かなければ)
―――――――――市街地某所 レジスタンス本部
ファントムは、リーダーと思しき女性に声をかける。その後、事情を説明したのだろうか。その女性が近づいてくる。
???「君がトイ君か。今しがた彼から話を聞いた。おっと、まずは名乗らなくてはな。」
ジグムント、と彼女は名乗った。街で医師をしていると聞く。
ジグム(ふむ・・・彼の言うとおり、瞳の奥深くになにか大きな力を感じる)
ジグム「よし、決めた」
トイ「何をですか」
ファン「おい、ジグムントお前まさか」
ジグム「君に頼みたいことがあるんだ。引受けては貰えないだろうか」
トイ「頼み?」
ジグム「君に要請する。我らレジスタンスの一員として、反乱に加わってもらえないだろうか?」
トイ「・・・えっ」
ジグム「引き受けてくれる・・・よね?」
彼女はおもむろに注射器を取り出す。流石にこのあとの展開を読めないはずもなく、
トイ「分かった!わかったからそれを仕舞ぇぇぇぇぇ!」
ジグム「わかってくれたようで嬉しいよ。」
彼女は注射器をしまい、
ジグム「おーい!ベル。十五万人目の戦力だ。」
彼女が声をかけた女性が振り向き、
ベル「そ・・・そう。ま、いいわぁ」
と半ば引き気味に言った。
ファン「・・・で、だ。コイツはどこの配属になるんだ」
ジグム「そうだなぁ・・・第五軍かな?」
ファン「よりにもよって俺の軍か・・・」
ファントムはそうつぶやくと、
ファン「そういえば正式に名乗っていなかったな。第五軍司令官、ファントムだ。」
どうやらファントムは軍司令官らしい。
トム「それで、反乱開始日は?」
ジグム「明日」
・・・なんだって?
ジグム「明日だ」
・・・聞き間違いか?俺の耳には「明日」と聞こえるのだが。
ジグム「そうだと言っているだろう」
・・・な、なんだってー!!
ジグム「明朝午前6時、街にいるブラックウィング監視員を全員殺す。ひとり残らず」
そう言うと彼女は嗤いながら、
ジグム「さあ、反乱を始めよう。まずはこの街の消毒だ」
と呟いて奥に消えた。
―――――――――次回予告
朝の街に響く軍靴の音。
断末魔とともに鬨の声が起こり、市民の歓声とともに軍は動き出す。
うなりを上げる魔法杖。煌く剣。火を吹く砲。
彼らの怒りは体現され、怒りが敵を潰走させる。
次回 とあるメイプルの冒険者第二章第十話 「開戦~解放戦争①~」
|