私は今、上から埃を被せたのではないかという程に汚れた部屋に居る。
一人ではない。二人で居る。
いや、なんと言えばいいのか、彼女は妖精だ。妖精と聞けばオルビスだと思ったそこの君。御名答、君は頭脳明晰だ。君程の生物なら人間でいう博士号とやらも容易に取得出来るだろう。心から尊敬する。
私は今、正確に言えば、雲に浮かぶ空中都市、オルビスの雑貨屋に居る。
説明するのは得意では無いので彼女と出会った詳しい経緯は省くが、この部屋に居る理由なら簡単に説明出来る。一般的に言う、〝探し物〟だ。
私に合っている武具があって、それが貰えるというので共に探している。
それにしても、
「何故雑貨屋に武器が・・・?」
独り言のつもりで疑問を口にすると、ダンボールを開けて中の物を探りながら彼女は答える。
「何を隠そう、前に一度、雑貨と一緒に武器や防具まで売っちゃおうと考えた事があってね」
「ほう」
目の前のダンボールから出てきた、〝ホローポイント弾 五ダース入り〟と書かれた少し大きめの箱を取り出しながら、私は虚げに言う。
「で、なんらかの問題が発生してその試みは失敗に?」
「そうよ。良く分かったわね」
「そりゃあ、この部屋を見れば分かりますよ。明らかに売り物じゃないです」
笑い声が背中越しに聞こえた後、
「やっぱり分かっちゃうわよね、これだけ埃塗れだと」
「まあ」
「埃塗れで大変な思いさせちゃってるわよね」
「そんな事ないです」
私は即答する。
御存知無い方の為に言っておく。
私は軽度の潔癖症だ。
潔癖症なのだ。
潔癖症で無ければ先程や今の様に脳内会話などしない。
勇気を讃えてくれ。
「ま、そういう訳だからさっさと見つけちゃいましょ」
少し掠れた声で返事をして、咳払いをする。
そういえば、
「一体どんな問題が起きてこれらの物は売れなくなったんですか?」
彼女は溜め息を吐きながら動きを止めて、そのまま言う。
「ここにあるやつ全部、隣にある武具屋から無償で貰ったのよ。いらないってね」
「へえ、お得ですね。それがなんで?」
そこで彼女は再び溜め息を吐く。
「余りに多過ぎて商品を売る為のスペースが足りなかったのよ」
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