「・・・お前な、自分が泳げない自覚ないだろ!少しは助ける身にもなれ!」
「ご、ごめ~ん」
プーッと口から水を出すヤヨイはさっきと同じ様に脱力してしまった。
「えっと、ごめんねヤヨイ」
「あ、姫。お気になさらず。コイツが悪いんで」
サクノは自分の不注意で溺れてしまったヤヨイに申し訳なく謝罪する。
「まっ、サクノも大概だがな」
「え?」
「え、じゃないだろ。危ないから気をつけろと言った端から転ぶとはアホかお前は」
「お、おいカンナ・・・」
「お前は昔からそうだ。いつもいつも注意力散漫で怪我しそうになったり危険な目に遭ったり、少しは用心しろと言ってるだろ」
「う・・・」
カンナがくどくど説教を続ける。サクノはカンナに言われて縮こまる。
「カンナの奴、相変わらず容赦ないな」
「一応自分の主君の筈、よね?」
「姫相手にあそこまで言えるのはカンナだけの特権ね」
別にカンナ以外の誰かが怒ってもサクノは咎めたりしないが、それをやるとサクノが泣くかもしれないので誰もやらないだけである。
(・・・しかし、今の何処かでデジャヴった様な・・・)
まあそんな事はさておき。
「じゃあ俺、ヤヨイ連れてくわ。服も乾かしてぇし」
「分かった。邪魔だと思ったら途中で捨てていいぞ」
「・・・捨てないからな?」
リュウはヤヨイをおんぶして小屋へと戻っていく。のだが、
「グヘ、グヘヘ、リュ、リュウの背中、濡れた身体で密着、グヘヘ・・・」
「・・・前言撤回。やっぱコイツ捨てた方が良いか」
リュウとヤヨイがいなくなり、探索を再開した。
「で、何でこうなるんだ」
その直後にカンナ達は巨漢の集団に囲まれていた。
「へっへっへ、命が欲しけりゃ・・・」
「風神流・風切り山嵐!」
カザミが吹き起こした竜巻が巨漢達を飲み込み、遥か彼方へと飛ばした。
「あっけなかったな」
「相手するだけ面倒だ。行くぞ」
「・・・あれ?」
サクノが何かに気付き、海まで近づく。
「どうしたサクノ。近づくなとさっき言って・・・」
「カンナ、何かいるわ」
サクノが指差した先は海面。カンナも一緒になって覗くが、
「何も無いじゃないか」
「え、でもさっきプクプクって泡が・・・」
ザパァンッ!
「「あ!」」
「・・・あ」
一人の女の子が海面から顔を出した。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
数秒見詰め合い、女の子が海へと潜って行った。
その時、女の子の下半身が魚の様だったのを覚えている。
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