『大怪盗イホンリ』の名が世界中に知れ渡ったのは、つい最近のことであった。
どんな財宝でも、どんな宝物でも、どんな金品でも瞬く間に盗んでしまう。どんなに厳重な建物であろうと、どんな厳重に警備員が配備
された建物であろうと、どんな地下深くに隠されようともイホンリの手に掛かれば一瞬で盗まれてしまう。
イホンリに盗めないものなどなかった。
イホンリの持つ特別な能力「スティール」。これにより様々な職業が持つ、多種多様なスキルを自分の物にすることができてしまうのだ。
あるときは幾千の矢を放ち、ある時は大検を振るい、ある時は幾重もの手裏剣を放つ。
スティールにより、いくつものスキルを使いこなし、目的のものを華麗に盗んでしまう。
その姿はまさに大怪盗であった。
今日も一仕事終えたイホンリは、隠れ家としている空き家にて休息をとっていた。
この空き家にはいくつものカラクリが仕込まれており、イホンリでなければ中に入るのすらままならないだろう。
両手で抱えきれないほどの財宝に囲まれたイホンリは、部屋に置かれた液晶テレビに映る自分の姿を見て、笑みを浮かべる。
連日、テレビが報道するのは大怪盗イホンリの話題ばかり。
テレビの中に移る自分の活躍に満足したイホンリは、ベッドへと横たわり、眠りについた。
これからこの部屋にて大きな異変が起こることなんて、その時のイホンリは全く知る由もなかった。
続く
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