イホンリがこちらの世界にきて3日目の朝。
今までと同様に朝、学校へ登校する。
あの日からいろいろなことがわかった。
ここは日本という国だということ。イホンリはここの学校の生徒であったということ。今までのイホンリは特に目立たないおとなしい生徒だということ。
主に晴稀からの情報だ。
日本なんて国があることはなに全く知らなかった。ちなみに言語が通じるのは謎だ。国が違えばまったく言葉がわからないなんてことも普通に起きえるはずだが、そのあたりはなにかがうまくやってくれているのだろう。まぁもともとここの世界にいた人なんだから、そのあたりは自然と話せるようになったのだろう。
しかし、肝心のことはなにひとつわかっていない。なぜイホンリはこの世界にやってきたのか。どうやれば元いた世界に帰れるのか。
ちなみにだが、元いた世界で使えていた能力はなにひとつ使えなくなっていた。
そして、晴稀から聞いたもともとのイホンリが暮らしていた家には誰もいなかった。親が両方とも海外旅行に行っているらしい。なんてご都合主義なんだ。
色々な考え事をしながら、学校へ到着する。下駄箱を開くと、上履きに乗せられるような形で一通の便せんが置かれていた。
「なんだこれ?」
手に取って裏返してみると、ハートの形をしたシールで封が止められていた。
教室に入り、すぐさま中身を見てみる。
どうやら先出人は咲希という人らしい。さきと読むのだろうか。
書かれているのは、放課後屋上にきてください。待っています。とそれだけが書かれている。
どういうことだ?
と、そこへおーっすと言いながら晴稀がやってきた。
「どうしたーん?」
お、なにそれと言いながら晴稀はイホンリの持っていた便せんをさっと取った。
便せんの中身を勝手に見た晴稀は、不意にこちらへと視線を向けた。
「これなに?」
その顔はやけににやにやしていた。
気持ち悪いなと思いながらもイホンリは朝来たら下駄箱に入れてあったと説明をする。
「ラブレターじゃんこれ!」
「なんだそれは?」
興奮気味に晴稀にイホンリは答えた。
イホンリはラブレターなんてものは聞いたことがなかった。この時代特有の言葉だろうか。
「知らねえのかよ!」がははと晴稀は笑う。
「ま、とりあえず放課後、屋上へ行ってみろって!」
ずっとにやにやしている晴稀がやけに癪に障る。
一体なんだってんだ……。
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