メイプルストーリー

おしゃべり広場

キャラクター名:
緋金
ワールド:
ゆかり

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創作物語

初心者物語 3ページ目「はじめてのクエスト」 日付:2018.12.22 04:47 表示回数:397

「ようし、到着だ」

トゥルーが声を張る。
トゥルーの事務所は、事件のあった場所のすぐそば、3つほど家を超えてひとつの角を曲がったところに建っていた。

…到着って、ここ?
奇妙な建物だった。
屋根の代わりに、正面に開かれた巨大な本と、虫眼鏡のモニュメントが鎮座している。
つやつやした本の白いページと、虫眼鏡に嵌められた分厚いガラスが、太陽の光を受けて輝いている。
様々な形のあるリス港口の建築物のなかでも、トゥルーの事務所はひときわ目立っていた。

「ははは、何だその顔は。びっくりしたか?」
隣で、トゥルーが軽やかに笑う。

「いや、その、虫眼鏡が……おっきいですね」
「ああ、これはな。情報屋という仕事を一目で表したものだ。
情報というのは、ただ誰かに聞き込みをするだけがすべてじゃない。
街の人間の噂話、現在の状況からの推測、紐解かれた古文書。
あらゆる人の声、モノの音、文字が情報源となる。

それらを一語一句聞き逃さず、読み逃さない。
それが、あの虫眼鏡が意味するところだ」

さ、中へ、と言いながら、トゥルーは木の扉を開けた。

事務所の中は、外観と同じくらい奇妙な空間だった。
部屋の奥まった場所に、カイの背丈ほどもありそうな巨大な金庫がある。
その上には、正方形の棚が並び、大量の巻物がところ狭しと詰まっている。
辺りを見渡すと、白い壁に立てかけられた、カイの背丈よりも遥かに大きな2色の巻物を見つけた。
……これ、どうやって開くんだろう。

きょろきょろとせわしなく観察していると、トゥルーは再び声をあげて笑った。

「好奇心旺盛だなぁ」
「す、すみません……じろじろ見てしまって。珍しい物ばかりで、つい」
「いんや、良いこった。若者はそうでなくちゃな。何事も、疑問と好奇心から始まるもんだ」
それから、トゥルーはすぐそばの本棚から、ひとつの巻物を持ってきた。
青い表紙に手を掛け、するりと中身を引き出す。

「えーと、どれどれ……うん、このへんだな。で、初心者にもやりやすく、この近辺で出来るクエストは、と……」
ぶつぶつと呟きながら、トゥルーは巻物を読み進める。

「そう……これなんかどうだ。『デンデンの殻あつめ』」
「デンデン……ですか?」
聞きなれない単語に、思わず首を傾げる。
「そうだ。デンデンってのは、まぁ、カタツムリみたいなもんだ。
おまえさんの故郷にもいただろう?」

僕の故郷の……カタツムリ。
記憶をまさぐるまでもなく、すぐにその姿が思い浮かんだ。
「そう、今想像しているそれを、もう少うし大きくしたやつだ」
トゥルーの合いの手に従い、カタツムリの姿を拡大してみる。
ぬるりとした半透明の体に、ぎょろりと大きな目の化け物が出来上がった。

「……き、気持ち悪いですね……」
「はははは!いやいや、慣れれば案外、可愛く思えるかもしれんぞ。
で、だ。そのデンデンってのは、大きく分けて3種類ある。
青い奴、赤い奴、緑の奴だ。
どれもデンデンには変わりないから、どれでもいいと依頼主から言われている」
「その、依頼主というのは……?」
カイが好奇心のままに問うと、トゥルーは一瞬考えこみ、やがてゆっくりと口を開いた。

「普通は公開しないもんなんだが……、まぁ、いずれ訪れるだろうから良いだろう。
ヘネシスっつう、ここより少し離れたところにある村からの依頼だ。
なんでも、デンデンの殻を大量に使う祭りをやっているとか」


*

リス港口の東側に出ると、そこには青々とした草原がひろがっていた。

一陣の海風に波打つ草。擦れ合う枝葉の音。
その誘惑に誘われるがまま、カイが石畳から一歩踏み出した時、がさりと足元で音がした。

……緑のデンデンがいた。

カイの膝ぐらいまである大きな殻が、白い肉の上に乗って移動している。
下を向いていた目が、ぎょろりとこちら側を見上げた。
一瞬、体が硬直する。

やばい。でかい。
思っていた以上に気持ち悪い!

だが、トゥルーからもらったクエストをこなさなくては、今後の旅費も工面できない。
……やるしかない!

カイは、手元の片手剣を握りしめ、ひとつ息を吸い込んだ。

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