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フリードの考えはウンウォルが抱いていたものならず、あの見張りのレッドドラゴンの難癖まで含んでいるものだった。そこまでドラゴンとハーフリンガーの結びつきは強く、また、人間は軽視されているのかとウンウォルは知る。
「すぐに聞かなかったのはどうして?」
「最初は、余所者の私が首を突っ込むのは良くないと思っていた。その後も外では誰に聞かれているかもわからないから、あえて控えていた」
そして帰ってきてすぐは折角の食事が不味くなると思ってと彼が少し茶化すように言えば、フリードはそれもそうだねとへらりと頬を緩ませた。
「……しかしそこまでわかっていながら、ひとりで王の元へ行こうとしていたのか」
「あれは単純にゆっくりしてて貰おうと思っただけだよ。憶測にすぎないし、そんな遠回しな事をしてくるぐらいなら直接危害はすぐに加えてこないさ」
「まぁ……」
「逆に言うと、君は俺が危ないと思って着いてきてくれたんだね?」
「え、それ、は……」
急に挙動不審になって目を泳がせるウンウォルに、フリードはハハッと声にして笑う。
「ありがとうウンウォル。さぁいい加減に長老の所へ挨拶に行かないと日が暮れてきちゃう」
「あ、ああ……」
席を立つフリードと、それに続くウンウォル。結局今の状態では違和感は違和感でしか無いのかと、ウンウォルは腑に落ちないまま話題を打ち切るしかなかった。
「……それはならぬ」
白い髭をたくわえた人間の老人は、はっきりとした拒絶を示した。それに対しフリードは想定済みのようにひとつも動揺せず、真っ直ぐ問う。
「どうしてですか長老」
「フリード、お前なら分かっておろう? 流れ者を受け入れた結果、何が起こったかを」
「それは分かっています」
「ならば儂の方こそ、どうしてか聞きたいところじゃ」
問いを返されて、尚もフリードの瞳は揺らがず直ぐに答える。
「彼は、あの者ではありません。それが全てです」
「なるほどのう……」
長老と呼ばれた老人はゆっくりと髭を撫でた。
フリード達は長老宅の玄関先にいた。軽い挨拶と、空き家があれば紹介して貰うだけのつもりで伺ったのだが、手土産を渡して用を告げた途端、長老は否を唱えたのだ。
フリードの答えに長老は頷く素振りを見せるもそれきり黙ってしまい、良い返事は返ってこない。
だが悪い反応でも無かった為もう一押しと、フリードは口を開く。
「もし、何か問題があれば」
自分が全ての責任を、そう言おうとした瞬間、別の誰かによって言葉は遮られた。
「あ、あれ、フリード?」
気弱そうな男の声。二人が振り向くと、そこにはフリードと同い年ぐらいの眼鏡をかけた青年が家を覗き込んでいた。
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