メイプルストーリー

おしゃべり広場

キャラクター名:
獣狸
ワールド:
ゆかり

冒険手帳を見る

創作物語

妖蝶は籠の中を夢見る 日付:2019.04.24 17:41 表示回数:230

ーーーーーーーー




 祝祭の街、レヘルン。時の流れも気にせず、住人も食べ物も無機物もみなお祭り騒ぎで常に街を沸き立てる。ここでは当たり前なあり得ない光景を望むのは、街の中心にある時計塔からの視線だった。
「ああ、私の夢よ。もっともっと拡がり、隙間なく歓声で埋め尽くしてください」
 人も夢も思考もなにひとつ逃れられない、私だけが思いのままにできる籠を作り上げてください。そう微笑むのは、この街の主。
 主は命を与えることなく息づく街を見届けると、極彩色のフリルを翻し窓に背を向けた。そのまま歩んだ先には、小さな籠と色鮮やかな蝶がひとひら。籠の針金に指を這わせ、中の蝶をとろけるような瞳で見つめる。
「もうすぐ、もうすぐです。この籠の中に、貴方が閉じ込められるのは」
 主は感じ取っていた。過去の自分の全てであった者が、この地へ近付いてくる気配を。弱くて惨めだった自分を自覚させられる、愛しくも憎くて憎くてたまらないあの者が来る気配を。
「貴方が来たら、もっと深く暗い夢の中で、昔の私ではなくなったのを思い知らせてあげます」
 もちろん貴方は覚えてなどいないのでしょうけどと、蝶を通してあの者を見た主は、こみ上げる熱情を吐息として吐き出した。蝶はぱたぱたと、狭い籠の中で閉じ込められていることさえ知らずに飛び回る。
 主は思い描く。どうやって、あの気高く美しいものを手折ろうかと。どうやれば自分に依存させられるのかと。

「私の手で、到底届かなかった貴方に触れて」
 貴方さえ知らない秘密を暴いて、
「私の力で、何もかも吸い尽くして奪って」
 快楽で壊して溺れさせて、
「私無しでは存在できない、籠の中の蝶にする」
 与えられる蜜だけ吸い続けるようになる。

 私の名を呼び、這いつくばって心の底から求めて縋りつく姿。それのなんと素敵なことでしょう! 恍惚に震え、耐えがたき歓喜が身体を駆け巡った。
「早くきてください、私の女王様。貴方を閉じ込めて、ようやくこの終わることのない悪夢は完成するのです」
 甘い甘い笑みを浮かべて、主は歓喜の湧き立つ身体を覆う裾を握った。

スタンプを押す

スタンプ(2

コメント

  • コメント(2

おしゃべり広場の一覧に戻る

変更する

×