暫くして、
「・・・」
サクノの命令で息抜きをさせられているカンナは、歩いている間も終始無言だった。
「・・・」
「カ、カンナ?」
「あ?」
カザミが話しかけると、カンナは不機嫌な顔を向ける。
「そう不機嫌になるな。姫はお主の事を思ってだな」
「・・・ああ。分かってる。だが私は大丈夫だと言って・・・」
「まあまあ良いじゃないのよ。折角遊べるんだし。カンナも飲みなさいよ。海藻使ったジュースだって」
能天気なミヤビに緑色のジュースが入った容器を渡され、カンナは引っ手繰るように受け取る。本当は投げ捨てたかったが、飲食物を粗末にするほど不機嫌ではないので渋々そうした。
「・・・チッ」
「ちょっと。何で飲んで舌打ちするのよ」
それは飲んだジュースの味が思っていたよりも美味しかったからである。不覚にもまた飲みたいと思うほどに。但し今度はサクノと二人っきりで。
そのまま食べ歩きをしながら街を散策していると、
「ねえカンナ。服屋さんあるわよ。見てみましょうよ」
ミヤビがカンナの腕を引っ張りながら服屋の方向を指差す。
「はあ?何を言っている。服など今着てる奴だけで・・・」
「可愛い服着たら姫さん喜ぶかもよ?」
「よし行くぞ。サッサと行くぞ。グズグズしてると殴るぞ」
「あんたどんだけ姫さんラブなのよ!?」
あまりの変わり身の早さにドン引きするミヤビはカンナの後を追う。
「・・・服屋か。おいミライ、行くぞ」
「お兄様お兄様お兄様お兄様・・・」
「可愛い服を着たらハヤトも喜ぶかもしれないぞ?」
「行きましょう。今すぐに。光の速さで」
「・・・お主も大概シスコンになっとるの」
目に希望を燃やすミライはスタスタと後に続く。
「ゲンブ、お主もついていくか?」
「・・・いや、拙僧は近くの茶店で時間を潰しておこう。女子の服はあまり分からんのでな」
「そうか(てっきりミウの服を買うかと思ったが、まあ良いか)」
カザミはゲンブが良く茶店の場所を確認し、ミライの後を追う。
「おーっ!色々あるじゃないの」
服屋に入ったミヤビとカンナは服を選び始める。
「さーてと、エッチな服はどこにあるかしら」
「ある訳ないだろアホ」
「あぁん!?カンナの視線、ゾクゾクするうぅ!」
カンナが鋭く睨みつけると、ミヤビは全身をモジモジさせて赤面しながらハアハア息が荒くなる。
「変態は放っておいてサッサと服を選ぶか」
「あぁんっ!放置プレイ何て斬新ー!」
もっとモジモジさせるミヤビを無視してカンナは店内を見て回る。
「さて、どうするか・・・ん?」
服を物色していると、カンナの目にあるものが映った。
「ねえねえクイナ、これ着てみなよ。絶対似合うよ」
「せ、先輩!?これ布生地が少ないじゃないですか!しかもなんか透けてるし!」
「良いじゃーん。これ着たらハヤト君が喜ぶかもよ?」
「何でそこでハヤトさんが出てくるんですか!?」
露出の高い服を薦めるアヤメと、それを見て赤面しているクイナだった。
「もう先輩、もうちょっと真面目に考えて・・・」
クイナがカンナに気付き、目が合った。するとクイナの顔が赤から真っ青に変わる。
「ん?どしたのクイナ」
アヤメが振り返ると、カンナと目が合う。
「・・・」
アヤメは表情一つ変えず、持っていた服を畳み直して元の場所に戻す。
「良いクイナ?こういう時はね、後ろを振り返って・・・」
アヤメとクイナが一緒にグルーッと回り、
「ダッシュで逃げる!」
「霊脈転移」
全速力で逃走を図ろうとしたが、カンナは瞬間移動によって二人の目の前に現れた。
「ギャアァァァァァァッ!?出たァァァァァァ!」
「何だ?人を幽霊か何かみたいに。首をへし折って内蔵全部引きずりおろすぞ」
「幽霊より怖いんですけど!幽霊より怖いんですけど!」
「ひぃぃぃぃぃ!ごめんなさい!ごめんなさい!」
二人はカンナの鬼の形相に恐怖し、抱き合って全身ガタガタ震える。
「とりあえず、表出ろ」
「は、はい・・・」
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